「あー、キ、キミ……、ぶげらっ!」
「そのサングラス外しておじさんと……ぶほうっ!」
バキッという鈍い音が響く度に、空中に男達が舞い上がった。
「全く……。不用意にボクへ声を掛けないで欲しいね。響華を見失ったじゃないか」
サングラスにトレンチコート姿の天也は、パンパンと手を叩くと一つ溜息をつく。
しかし、妹の教室はリサーチ済だ。
「あの害虫。学校に着くまで妹に手を出してないだろうね? 出してたら……殺す」
天也は身体からどす黒いオーラを漂わせると、そのまま学校へ向かって歩き出した。
そして学校に着いた天也は、校舎の外にある木に登り、窓から内部を双眼鏡で覗き、響華を見守っていた。
1日何事も無く過ぎ去り、後は下校するのみのはずなのに、響華は教室内であの害虫と2人きりで残っていた。
何か仲良さげに笑顔で話している2人の姿に、思わず掴んでいた太い枝を握りつぶす。
「響華、そんな害虫に構わず、早く帰りな……!」
だが、天也の言葉は伝わらない。
と、ふと見つめあった2人の動きが止まり、ゆっくりと近付いて行く。
「!!! 響華っ!」
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