ゆらり、ゆらり。
意識が漂う。
ふと目を開けばそこは真っ白な世界。

上も下も左も右も、何もわからない。


ここに、私は、一度来たことがある。

私の世界からオールドラントに来る時。
ユリアとローレライに出逢った場所。


ここが何処だかはわからないけど、怖くはない。
きっと、彼に呼ばれて私はここに来たのだろうから。





隠された預言と真実


「万物を司る女神…メアリーよ、」


「ローレライ…貴方が私を呼んだの…?」


「あぁ。メアリーが起きている時より眠っている時の方がコンタクトが取りやすいのだ。そしていよいよ崩壊が始まる。」

「崩壊…?」

「オールドラントの崩壊だ。メアリーには預言を覆して欲しい。」


成る程。ユリアが言っていた事ね。
最近声が聞こえなかったのはまだその時では、なかったから。
オールドラントが崩壊に向かってしまってる今こそ、私にコンタクトを取るべきだとローレライは判断したのね。


「ところで、ローレライ…何故、私なの…?」


違う世界の人間で…預言に捕われないから…?
そう聞こうとしたら、ローレライはただ一言、違う、と私の思考を読み取ったかのように言った。



「いや、それも確かにある。だが、万物を司る女神であるメアリー、お前はユリアの妹…セレネの生まれ変わりなのだ。」

「?セレ、ネ……?」

「あぁ…」


そして、ローレライは私にセレネについて語り始めた。

セレネ・ジュエ。
ユリアの妹でありユリアのように第七音素が使えた。
セレネはユリアと違い一般人の知るオールドラントの歴史に名を残してはいないけれど、一部の人間が知る歴史には名前も残っているらしい。
何よりユリアの残した秘預言(クローズドスコア)に対して、セレネは隠預言(シークレットスコア)というものを残しているとのこと。



「………つまり、セレネが残した隠預言は、秘預言の中の隠された預言ってこと…?」


「簡単に言うとそういう事になるな」


「ローレライは、隠預言を知っているの?」


「メアリー、お前も知っている。」

「私は、知らないわよ?」

「いいや、知っている。メアリーはセレネの生まれ変わりなのだ。集中してみろ。」


そう言われては瞼を閉じて集中するしかない。


「………!」


ND1995
白銀煌めく街に異世界からの来訪者現る。
名を万物を司る女神と称す。
その者はセレネ・ジュエの魂を受け継ぎ、7つの精霊を操る力を持つ黒衣の姿なり。
彼女は街の四人の子供と一人の大人によりこの世界で生きる術を身につけるだろう。


ND1996
一人の少年が素養のない力を使おうとし恩師を殺めてしまう。
だが、少年は死を理解出来ずに自身が開発した機械を使い恩師の模造品を作る。
結果、恩師は死に模造品は彼等を殺めようとするが、万物を司る女神が自らの命と引き替えに少年達を救うだろう。


ND2000
ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。
其は王族に連なる赤い髪の男児なり
名を聖なる焔の光と称す。彼はキムラスカ・ランバルディアを新たな繁栄に導くだろう。


ND2002
栄光を掴む者
自らの生まれた島を滅ぼす。名を「ホド」と称す。
この後、季節が一巡りするまでキムラスカとマルクトの間に戦乱が続くであろう。


ND2008
万物を司る女神、再び白銀煌めく街に現る。彼女は少年達のいる水の都へ向かいマルクトの皇帝の片腕として、先の世を過ごすだろう。
そして栄光を掴む者、万物を司る女神の存在を知る。彼は後に彼女を利用しようと考えるだろう。

ND2018
ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へと向かう。
そこで若者は力を災いとしキムラスカの武器となって街と共に消滅す。
しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは領土を失うだろう。
結果キムラスカ・ランバルディアは栄え、それが未曾有の繁栄の第一歩となる。


ND2019
キムラスカ・ランバルディアの陣営はルグニカ平野を北上するだろう。軍は近隣の村を蹂躙し要塞の都市を進む。やがて半月を要してこれを陥落したキムラスカ軍は、玉座を最後の皇帝の血で汚し、高々と勝利の雄叫びをあげるだろう。

ND2020
要塞の町はうずたかく死体が積まれ、死臭と疫病に包まれる。ここで発生する病は新たな毒を生み、人々はことごとく死に至るだろう。これこそがマルクトの最後なり。以後数十年に渡り栄光に包まれるキムラスカであるが、マルクトの病は勢いを増し、やがて、一人の男によって国内に持ち込まれるであろう。




脳裏に浮かぶ預言の数々。
あまりに膨大な量に意識が飛びそうになる。


「……っ………」


「大丈夫か?」


「…えぇ…」


「メアリーが見た預言はユリアとセレネの預言が混ざっている。そして、セレネの預言は預言に捕われない為にもその事象が過ぎたら詠めるようになるのだ。」

「―――ND2018以降はユリアの預言…?」

「そうだ」


「―――…この預言を、覆して…オールドラントに訪れる危機を回避させる事が、私のやるべき事…ってわけね。」


頷くローレライを横目に、私はこれからについて考える。

何より気になったのは
栄光を掴む者が、私を利用しようとする、って部分ね。


「ローレライ、私、そろそろ現実に戻りたいのだけど……」

「あぁ、気をつけて、メアリー」


ローレライに見送られて再び現実へとメアリーが戻った頃。

ルーク一行は既に『栄光を掴む者』に出会っていて、彼がメアリーの事を鋭い瞳で見ていたなんて……
メアリーは知る由もなかった。




〈 To be continued 〉
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