覚悟を決めたなら……
その覚悟が揺るがないように、
前に進みなさい。
怯えたっていい
ただ、逃げないでいてくれれば。
それでいいの。
セントビナー
「ルーク、起きて。そろそろ出発するわ」
「…ティア…もう動けるのか…?」
「………えぇ、心配してくれてありがとう。」
朝、昨日の事を踏まえてメアリー達は新しく陣形をとることにした。
ジェイドとガイとティアで三角の陣形を取り、メアリーがイオンとルークを守る。
そうルークに伝えると歩きだす一行。
ただ一人、メアリーだけは、歩み出そうとはしなかった。
メアリーはルークから昨日覚悟を決めた事を聞いていたから。
だからこそ、彼が皆を呼び止めると判っていた。
「ま、待ってくれ」
案の定、呼び止め、闘う意志を皆に告げた。
自然と口角があがる。
彼の覚悟は、本物。
それが分かれば充分。
「良いじゃない。ルークの覚悟を、見せて貰いましょう?」
「…良いでしょう。」
「最悪、私がルークを守る。」
「えぇ、お願いしますよ、メアリー」
ルークも戦力として陣形を組んで進みようやくセントビナーに到着した。
だが、街の入口には何人もの神託の盾騎士団の兵士達が検問をしている。
これでは、中に入れない…どうするべきか悩んでいるとエンゲーブからの馬車が中に入るのが見えた。
「なるほど。これは使えますね。」
「そうね、もう一台来るみたいだし…乗せて貰いましょう。」
「ならエンゲーブへの街道を少しさかのぼるか」
「行きましょう」
馬車に身を隠しセントビナーに潜入する事に成功した一行は乗せてくれたローズにお礼を言ってからアニスと約束をしたマルクト軍の基地へ向かう事に。
必然的に入口付近を通る事になってしまったのだが…
「!隠れて…!」
ティアのその言葉で隠れるメアリー達。
身を潜めて様子を伺う。
「導師イオンは見付かったか?」
「セントビナーには訪れていないようです。」
金髪にストール、あれは、リグレット。
リグレットは憲兵に話を聞いていて、その周りにはラルゴやアリエッタ、そしてシンクがいる。
「イオン様の周りにいる人たち、ママの仇…この仔達が教えてくれたの。」
「…導師守護役がうろついてたってのはどうなったのさ」
「マルクト軍と接触していたようです。」
アリエッタの悲痛な声、シンクは気にも留めないようにアニスの行方を気にしている。
「俺があの死霊使いに遅れをとらなければ……面目ない」
ラルゴとジェイドは戦ったのね…。
ちらり、とジェイドに視線を向ければ「仕留め損ねましたか…」そう呟いたのが聞こえた。
何が合ったのか聞こうとしたら高笑いと共に椅子に乗った怪しげな男が現れた。
「ハーッハッハッハッハッ!だーかーらー言ったのです!あの性悪ジェイドを倒せるのは、この華麗なる神の使者、神託の盾六神将、薔薇のディスト様だけだと!!」
「薔薇じゃなくて、死神でしょ」
誇らしげに宙に浮かぶディストだが、シンクにつっこみをいれられ、皆に無視され、追いていかれ……地団駄を踏んでその場を去って行った。
よく空中なのに踏めるわね…ディスト…。
「……ディスト……」
いえ、サフィール…
あなた、いつから…そんなイタイキャラに……
「最初からですよ、メアリー」
「……心を読まないで、ジェイド」
「読んでませんよ、解りやすいんですメアリーが」
「………………」
そんなに、解りやすいかしら…。
「…プッ…」
ペタペタと顔に触れていたら隣から吹き出す音が聞こえた。
「………ガイ…?」
「ははっ…!いや、すまない…!メアリー、面白いな」
面白い…?
面白いとこなんて、一体どこに…
「顔に、出てるしな…っ…」
くっくっと笑いを堪えるガイ。
……堪えようとしてるんでしょうけど、堪えきれてないのよね。
「……っ!?うわぁぁ!す、すまなかった!!だから離れてくれぇぇっ!」
「…次は許さないわ」
ぎゅっと絡めていた腕を離してスタスタと軍の基地へと歩き出す。
「メアリーは怒らせると怖いんですよ、ガイ」
「……肝に銘じておくよ…」
楽しそうなジェイドの声と苦笑じみたガイの声が響いた。
< To be continued >