どんなに近いと言えども、
やはりセントビナーは遠くて…


途中で、イオン様が倒れてしまって 私達は休憩も兼ねて
改めて自己紹介をする事に。



本物の覚悟





「俺はガイ。ルークの家の使用人さ。」

「私はティア。よろしく…?」


ティアがガイに手を差し出し握手を求めたというのに、ガイはブルブルと震えながら一歩後ろに退く。
その表情は青ざめていて、見ていて可哀相になってくる。


「…?」

「ガイは、女嫌いなんだよ。な、ガイ!」

「いや、そういうわけじゃ…」

「…女嫌い、というよりも……女性恐怖症では…?」


女嫌い(女性恐怖症)のレッテルをルークに貼られてガイは軽く沈んだが、そこは苦労人。
上手く立ち回り、メアリーとジェイドに言葉を掛けてこれ以上ルークに余計な事を言われないようにとした。


「えっと……」

「私はメアリー・リー。」

「ジェイド・カーティスです。」

「そうか。二人は、マルクト帝国の軍人なんだよな?」


その格好からして…、とガイはいろいろ呟いている。


「確かにそうです。」

「ジェイドは私の部下なのよー」


「へー、ジェイドはメアリーの部下なのかー……って、えぇ!?」

このメアリーの言葉にはガイだけではなく、ティア、ルークも驚く。

「あら?」

「やはり、メアリーが私の上司には見えないんでしょうねー」


「大佐の上司、って事は…?」

「大将ですよ。"扇剣の姫君"メアリー、聞いた事ありませんか?」


「!あの有名な…!?」



ガイの言うあの有名な、かは解らないがメアリーは頷いて微笑んだ。


「……扇剣の姫君…」


「一応、そう言われてるわ」


闘う姿が舞っているかのようで
その美しい容貌、武器である鉄扇の舞姫、剣の月影から、いつしかメアリーはそう言われていた。それが、マルクトに留まらずにダアトやキムラスカにも伝わっていたとはメアリーも驚きだ。


「へー、ならメアリーってすげーんだな?師匠と同じだ!」


今まで会話に不参加だったルークは楽しそうに笑い師匠…ヴァンの素晴らしさについて語る。
勿論、その話を真面目に聞いてくれているのはメアリーとイオンだけだ。


暫く談笑は続いたのだが、ふと皆の空気が変わる。
(皆といえどもルーク、イオン以外なのだが……)


「神託の盾騎士団ですかねぇ?」

「追っ手が来るなんて、早かったわね」

「まぁ、仕方ないだろうさ」

「早く倒しましょう」


軍人組と使用人は殺気に気付いたようで立ち上がり戦闘体勢になりイオンはゆっくりと邪魔にならないような位置に移動するが、ルークだけは微動だにしない。


「に、人間………」


どうやら、相手が人間ということに恐怖を感じているようで、戦闘が始まっても攻撃を受け流すのがやっとらしい。



「くっ……!」

「死ねぇえぇぇっ!!」

「ルーク、逃げて!!」


ティアが叫び、ガイが走る。
だけど、間に合わず、剣はルークへと振り下ろされた。

「―――っ!!」


痛みを覚悟して閉じた目。
だが、痛みは一向に訪れる事はなく、そっと目を開けば腰が抜けた自分をティアが庇って倒れていた。


「……ティ、ティア……」

「………………ばか…」


やっと紡ぎだした声は震えている。
あぁ、俺は……馬鹿だ……。


そう思う間もなく、再び神託の盾騎士団は剣を振り上げたが、ガイがそれよりも先に神託の盾騎士団を倒した。











「………大丈夫、傷はそんなに深いわけじゃないわ」

「そうですか、」

「良かったな、ルーク!」

「………あぁ…」


結局、ティアやイオンの事を考え 今日はこのままここで野宿する事になった。
思いつめた顔のルーク。
自分の覚悟が弱かったせいで怖じけづき、仲間で…しかも女性であるティアに助けられたというのが効いたみたいね。



「メアリー……俺、決めたんだ。ちゃんと、闘うよ。相手が人間でも……」




さぁ、ルーク。
覚悟を決めたのなら、本気で闘うのよ。
負けたら待つのは死しかないわ。
誰しも好きで闘ってるわけじゃない、って事……忘れないでね。



「頑張ってね、ルーク」

「あぁ、今回みたいな事には二度とさせない…」



< To be continued >





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