森の外に出ればタルタロスが
待ちわびていた。
その近くには、マルクト兵とアニスの姿。

そろそろ、ジェイド達も話は終わったかしら?





六神将来襲




「イオン様、大佐ー!!」

「お?あの子、お前の護衛役じゃないか?」

「はい、アニスです。」

「お帰りなさーい!」


ハートが飛び交うようなアニスの甘ったるい言葉。

「あれ?おい、メアリーは?ここにいるんだろ?」


そう言うルークと無言でジェイドを見るティア。
何だか、出にくいわね…。


「ご苦労様でした、アニス。タルタロスは?」

「ちゃんと来てますよぅ!」


今、メアリーがいる場所はちょうどルークとティアの後ろにある木の陰。
いつもの軍服に身を包んだメアリーは、どうみても先程、ルーク達と共にいたメアリーとは別人に見える。


「正体不明の第七音素を放出していたのはあなたたちね」


背後からした女性の声。
まるでついさっきまで一緒にいたメアリーみたいだ…
だけど、違う。
メアリーは、もっと優しい声色で……
こんな冷たい声色じゃない…


なら、なんで……
なんで俺は振り向けないんだ…!


「…あの二人を拘束しなさい」

「おい!どいうことだよ!!」

「ジェイド!二人に乱暴なことは…」

「ご安心ください、イオン様」


「何も殺そうとしてるわけじゃ、ありませんから。」


ルークの葛藤も虚しく、
女性はルーク、ティアの間を通り抜けジェイドの隣まで歩いた。


「!!…メアリー……」

「嘘…」


呆然とした二人の声が聞こえた気がしたけど聞こえないふりをして声を張り上げた。

「二人が抵抗しなければ、ですがねぇ」

「――――連行して!」



ルークが私を呼んでいるのが聞こえたけれど、私はそのまま部屋には入らずに甲板に向かう。ジェイドがルーク達に説明をしているだろうし……
居なくても、良いわよね?





―コツン…


「………この卵…」


アリエッタに、渡せば良いのよね。
それにしても……アリエッタって、あの妖獣のアリエッタかしら…?
会うことがあれば聞いてみなくちゃ、いけないわよね…。
約束は守る主義ですもの。



荷物に紛れた卵を一撫でしメアリーは空を見上げる。



視界に入るのは青空と雲と……
あれは……


「グリフィン!?」



こんな、集団で…!!


「………っ……」


メアリーは慌てたように周りを確認したあとに、
もう一度グリフィンを確認する。
数え切れない程のグリフィン、その背中にライガが乗っている。


「連係行動…!?そんな馬鹿な…!」


グリフィンから降下してくるライガ達。
このままだと……応戦が間に合わなくて皆死んでしまう!!




「守らなきゃ…!皆を……!」



そう決めたメアリーの行動は早かった。


「月影の舞姫…、発動っ!!」



仲間を……
マルクト兵を…安全な場所……
ここから1番近い…セントビナーに!!



メアリーが床に触れるとタルタロス全体を譜陣が包んだ。
青白く光り輝く艦内。

光りが収まった瞬間…
先程までライガやグリフィンと対戦に応じていたマルクト兵達が一人残らずに消えた。



「はっ………はぁ……」



これで、皆助かったわよね?


さぁ……ここからは、飛ばしていないジェイド達を探しながら魔物を倒さなくちゃいけないわね…。



「火焔 紅蓮焼破!」


一度も立ち止まる事なくメアリーは甲板の上で魔物を切り捨てる。
あらかた一掃したところで剣に付着した血液を薙ぎ払う。



「へぇ、なかなかやるじゃん。」

「!誰!?」

「流石、扇剣の姫君 メアリーサマだね。」

「あなた……六神将 烈風のシンク…!?」

「ボクの事、知ってるんだ?へぇ、意外だな」


仮面に覆われた顔から表情は見えない。
だけど、声は至極楽しそうで、その手にあるボックスのようなものを投げて遊んでいるようにみえる。


「……ねぇ、いくらアンタでもこれは効くよね?」


「え?」


そう言って、シンクは手で弄んでいたボックスをメアリーに投げ付けた。
突然の事に対応できず、メアリーはボックスから放たれる網状の光りに包まれた。



「きゃぁ――…っ!?」

「封印術(アンチフォンスロット)だよ。導師用とアンタ用に、ね。」

「シン、ク……」

「…、気安く名前、呼ばないでよね。」

倒れたメアリーの姿を一瞥しシンクは去った。


「――――――ぅ……」


シンクがいなくなって甲板は魔物もいないために静寂に包まれている。
そんな中、メアリーはなんとか立ち上がった。



「………行かなくちゃ……」


身体が、怠い。
水の中を重りを付けて歩いてるみたい。
音素を感じにくい。


「……封印術をかけられるなんて…予想外だったわ…。」



慣れるまで時間がかかりそう。
それに…解呪もしなくちゃいけないし。
先が思いやられるわね…。



メアリーはこれからの事を考えて頭を抱えるのだった。





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