「イオン。用意は出来てる?」

「!え、姉様……!?」

「?」

「な、なんで窓からっ…!」

「逃亡するなら、ここからかなって思ったのよ」



新しい幕開け







昨日の約束した時間。
やはり堂々と正面きってイオンに会いに来るわけにもいかなくて、私は窓からやってきた。


「彼、が…?」

「うん。僕の、代わり。これからの導師イオンだよ。」


ベッドの中、すやすやと眠る緑の髪の男の子。
近寄り顔を見れば、確かに私の後ろに立つイオンと同じ顔。
梳くように髪を撫でて ゆっくりと後ろを振り返った。


「この子には説明したの?」

「……ううん。僕の事は何も。」

「そう。じゃぁ、行きましょう?」

「あ、待って!」

「?」

棚からナイフを取り出すイオン。
ナイフ、って…
別に闘う訳じゃないのに……


「何するの?」

「こう、するんだ」


おもむろに、ナイフを振り下ろす。
はらはら、と緑の糸が舞い散った。


「い、イオン…!あなた、髪…っ…」

「良いんだ。これはけじめ。イオンとの決別だよ。」


ぎゅっとイオンが手を握りしめれば髪は光と共に拡散して消えた。



「……さっぱりしたわね」

「…似合わない?」

「ううん。似合ってるわ。」


短くなった髪。
"イオン"との決別は確かに必要で……
でも 幼い彼には酷な選択だったはず。


「え、姉様…?」

「ありがとう、"イオン"…、いいえ……ソレイユ。」


「?」

「あなたの、名前よ。"ソレイユ"。」

「太陽……」

「えぇ、太陽のように光り輝いて欲しいから…」


「ありがとう…姉様」


優しく包み込むように抱きしめれば ソレイユは微笑んでくれた。


「さ、今度こそ行きましょう。」

「うん」

「……"イオン"、頑張ってね…」


最後にもう一度だけベッドに眠る彼の頭を撫でて私達はダアトをあとにした。






「ということは、ソレイユは弟で、この世界に来てしまった…と。」

「…えぇ。そういうこと、よ。」

「導師イオン、みたいだな。ソレイユは」


「僕は、ソレイユです。姉様の弟でしかない。」

ピオニーの言葉にピクリと僅かに反応する。
だけど顔に出さずにやんわりと否定するソレイユ。

「では、陛下。ソレイユも、私の家で?」

「ん?あぁ…そうだな。そうしてくれ、ジェイド。」

「……解りました。」



ピオニーや、ジェイドには
ソレイユは私の弟で何故かこちらの世界に来てしまった、と説明しておいたので 大丈夫だろうと信じてみる。
まぁ…きっとジェイドにはバレてしまうのだろうけど……。



とにかく、
こうして、イオンのソレイユとしての人生は幕を開けたのだ。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -