軍人になってから1年目。
そして、この世界に来てからもう…3年。


軍人として最初はやっぱり基礎の書類運搬や雑用。
3年の月日は軍の事を覚えたりこの世界について学ぶ良い時間にもなった。


…ひとつ、気になるのは私とジェイド以外は皆 軍服の形が基本は同じ事。


やっぱり、これ 改造されてるのかしら………?


けれど、そんな事考える暇もなく…私は毎日毎日、書類に追われるばかり……。


いつになればコレはなくなるのかしら…


初任務



そろそろ書類が多過ぎて嫌になり始めた。
そんな矢先の事。


「メアリー少尉、任務です。」


「はっ!」


「軍人としては初任務ですが、あまり緊張せずに。」


「……はい、ありがとうございます。」


「では、内容ですが………魔物の討伐です。少尉の力量は重々承知ですが、基本任務なのでお願いします。」

「了解しました。」



上司にあたる、ジェイドから初めて言い渡された任務は魔物の討伐。
詳しく話しを聞けば 最近エンゲーブに魔物が増えて食料庫や畑を荒らされてしまうらしい。
食物連鎖が何らかの形で崩れてそうなっているのか……
それとも人為的なものなのか…。


それを見極めるのが私の仕事。
初任務、ということと…書類から解放された私は
足取り軽くエンゲーブに向かう。


「ふふ、教団を思い出すな……」






「メアリー!!大変だよー!!」

「もう、兄さんったら……」


「姉さん!兄さんなんか放っておいて良いのよ!」


「そう?」


「えぇ。あ、姉さん!アレンくん達だよ!」


「!お帰り、アレンくん、ラビ、ユウ」

「ただいま、メアリー、リナリー」


「ただいまさぁー!」


「………ちっ……」


「ユウー?舌打ちは何故かしらー????」


「!!悪かった…!!」









「………皆、元気かしら……?」



物思いに耽りつつも辿り着いたエンゲーブ。
予定より早くついたのはメアリーの力のおかげとも言える。
街を歩き見つけた一際大きな家。ノックして中へと入れば中年といえよう女性がいてメアリーを迎え入れた。



「……じゃぁ、魔物が増えた、というのは最近ですか?」


「えぇ、えぇ。そうなんですよ、少尉。理由はわかりませんが、何故か魔物がここまで来るようになって……」


この街の村長であるローズさんに話を伺えば、魔物は急に現れたという。
原因は不明。


なら、直接 森に行くしかないわよね……。



「ありがとう、ローズさん。」


「いいえ、こちらこそ…ありがとうございます、少尉。小さな村の願いを聞いてくれて…」


「…困った時は助け合わなければいけませんから」

「……ありがとうございます。
私はここで暖かい食べ物を用意して待ってますね、少尉。」

「………じゃぁ、早く終わらせて戻ってきますね。ローズさんの食事、楽しみです」


談笑も程々にして、ローズさんの家を出た。
向かうは、魔物の蔓延るという…チーグルの森。



―ザシュッ!!


「……本当に魔物の巣窟みたいね、ここは」


斬っても斬っても 何処からか現れる魔物。正直、このままでは…私の体力は持たないかもしれない。
そう思う程に、次から次へと無遠慮に飛び出してくる。



「けど…何か、おかしい……」



そう、確かに魔物なのだけど…
私の胸にポツリと疑問が沸く。

種類は同じでも、何かしらの変化はある。たとえば毛並みや模様。それから癖。
だけど…今まで斬った魔物は違う。
模様も毛並みも癖も、
全部が全部 同じで
……まるで、同じ魔物みたいな…。



「…………まさか、ね……」



有り得ないじゃない。
魔物のレプリカ、なんて……


いえ、正しくは…レプリカを作れるなんておかしい。
ジェイドがレプリカは禁忌とした、今。
フォミクリーは使えない。
勿論、エンゲーブ周辺に 施設なんて無かったのだから……作れる筈がない。



「…………誰が、何のタメに……」



ただ、ひとつ 解るのは…
魔物の増殖は人為的であるという事。




そのまま現れた魔物は倒しつつ奥へと進んで行けば 信じ難い光景をメアリーは眼にした。



「……フォミ、クリー…」



ゴゥン、ゴゥンと音を響かせながら動く機械。
青白い特有の光を放射しながらも 魔物が 寝台に現れては森へと逃げ、現れては森へと逃げ…を繰り返していた。



「……終わらせましょう……。こんな事……。」



そう言ってメアリーはその手に扇を握った。
怒りからか、悲しみからか…手はふるふると震えている。


やがて、メアリーはゆっくりと扇を一閃した。




「……おやすみなさい。良い夢を…」



ピシリ、と亀裂が入りフォミクリーが崩壊した。
だがメアリーが狙ったのはフォミクリーだけでなく生み出されたレプリカ達もだった。
魔物であろうと人間であろうとレプリカであろうと命の重みは同じ。



その事を軽んじたつもりはない。
だけれど 自分が選んだ軍人という道は…
エクソシストと同じで
命のやり取りである戦をする。



簡単には私は、立ち止まれない。




「………そうよね、……」



空に向かって呟かれた言葉は
まるでメアリー自身に問い掛けるような声だった――――。



<To be continued>
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