小さくて幼い適合者。



彼を守るのが
今の私の役目…




襲撃




部屋に入ると同時の激しい爆音。
咄嗟に庇った子供達に怪我はないようだけど…


アレンくん達は大丈夫かしら…


「恐いよぉ…エミリアぁ〜」

「いんちょおせんせぇー」


「大丈夫よ、皆は私が守るから」

「うぇ…っ…お姉ちゃん…ッ」


「えぇ〜〜〜ん」


「大丈夫、大丈夫だから」



泣き叫ぶ子供を抱きしめてあやす。
言葉では子供達を心配してても目線は辺りを警戒して アクマが何処にいるか確認してる。
その時、私の背後から空気を切るような音と 鈍い打撃音が聞こえた。



「……アレンくん、ユウ…!」



後ろを振り返れば二人がレベル4を撃退してくれていた。


よかった…
皆、無事みたいね…



「メアリー!子供達を地下に連れて行きますよ」


「リンク…!それより、アレンくんの能力で…」


「駄目です!規則があります!」


「……リンクの分からず屋!」



頭の堅いリンクには子供の命より規則のが大事らしい。
そんな事知るか、とばかりにアレンくんは横で能力を発動しようとしているけど…
何時まで経っても発動しない。



「アレンくん?」


「ウソだろ……。ゲートが作れない…!?」



「!!リンク、エミリア達を連れて下に行きなさい!」


「解ってます」



マリ、ユウ、アレンくんがレベル4を食い止めてる間にリンクは子供達を連れて地下へと向かう。







「マリ、こっちは頼んでも平気かしら?」


「あぁ。行ってこい、メアリー」

「ありがとう、マリ…!!」



急に子供達とリンクが心配になった私はマリの了承を得て階段を飛び降りた。



−タンッ…!



「加護?はっ…知るか!!」


着地して聞こえたのはシスターの声。
あぁ…彼女は、ブローカーなのね?



「リンク…」


「!メアリー……。シスターがブローカーでした」


「……えぇ」



金銭と引き換えに情報とアクマの材料となる人間を提供し、千年伯爵と取引する人間…ブローカー。


自らすすんで悪魔に飼われたブローカーは加護対象外。


だから彼女がアクマの『ごはん』になってようと、私達が助ける義理はない。


「メアリー、私はティモシーを助けます。なので、あなたは彼女の傷を…」


「…判った。」


リンクがアクマの群れに飛び出したのと同時に私は直ぐさまエミリアの治療に入る。


「…ファーストエイド」


「!今のは……」


メアリーの言葉と共にメアリーの手からは青い輝きが放たれてエミリアの肩と脚の傷が見る見る間に消えていく。



「…もう大丈夫かしら、」


「……あ、ありがとう…」


「いいえ。」



エミリアは もう大丈夫ね。
後はリンク……



「秘術!黒羽焔气」




声と一緒に熱風が廊下に押し寄せた。
リンクが勝ったのかもしれない、と思ったけど…それは間違いで…。



「……リンク…!!エミリア、ここで待ってて…!」


「え…!?」



人形のようになって座り込んでいるリンク、院長や子供達を壊されないようにメアリーは一瞬で階段付近の部屋まで移動させた。


メアリーが戻ってきたときには回復したエミリアが銃を手にしてアクマに立ち向かっていた。



「やめろ、エミリア!死んじゃうぞ…!!」


引き裂かれるエミリアの身体。
涙し吼えるティモシー。


悲痛な叫びに私は ティモシーの絶望を見た気がした。





だけど、実際は
レベル2がレベル3からエミリアを守っていて…



「……まさか……イノセンスの覚醒…?」


ティモシーのイノセンスが
本来あるべき姿に覚醒した?

人間に憑けたのなら、アクマにも憑ける。
理屈としては 間違ってないはず……。


それならレベル2がエミリアを守るのにも納得がいく…。



「ティモシー…」



「!姉ちゃん……」


「……目前に、どんな困難が立ち塞がっても…真っ直ぐに歩いて行きなさい。」



「…………おう…」


「さぁ、エミリアを守ってあげてね、ティモシー。」

「分かってる!」




「私は貴方を命に代えても護るから…。」


大きく頷いてレベル3に立ち向かっていくティモシーの後ろ姿にメアリーはポツリと呟く。





「ぐへへっ…ガキを護るだってェ?お前に出来るかな??」


「………あら。レベル3ごときが何を言ってるのかしら?」



ティモシーが倒しに行ったのとは、また別のレベル3がメアリーと対峙する。


「はん!!偉そうな口がいつまでもつかな!?」


大振りの攻撃。
ふわり、とかわしたメアリーは空に手を伸ばし剣を生成する。
鍔のない真っ白さに装飾品の赤い紐が良く映える。


「おやすみなさい、良い夢を…」


メアリーが、そう言った時には既に剣は振り下ろされた後で
レベル3は断末魔を上げる事もなく消えた。




「……凄い」



全てを見ていたエミリアは
メアリーの一連の動作に見惚れ感嘆の溜め息を零した。



メアリーの戦闘は闘っている、というよりも舞か何かを見ていたような感覚に周りの情景を忘れて自分とメアリーだけが此処にいるかのような錯覚さえも齎された。



「エミリア」


名前を呼ばれてハッとした時、さっきまで地下にいたはずが、一階に逆戻りしていた事にエミリアは目を瞬かせた。


「エミリアは、リンクをお願い。」


「…は、はい…!」



今は恐怖などよりも 頼まれた事を実行すべきだどエミリアは理解し、すぐにリンクを抱き抱えた。
それを確認したメアリーは
踵を返すようにして 直ぐさまティモシーの身体へと駆け寄る。


(あんな、あからさまに身体があれば狙ってくださいとでも言ってるみたいね……)


「肉体を消せば適合者も何もないわ…!!」



アクマもその考えにたどり着いたらしくメアリーが護るよりも先にティモシーの身体へと腕を振り上げた。



「消えろ、適合者ぁぁぁ!!」


「させないわっ…!!旋風 花風!!」



どこからともなく突風が吹いてアクマの視界一杯に花びらが舞う。
その花びらはティモシーの身体を隠しさった。



「…続きまして…水流 氷雨」



扇が一瞬にして剣となりアクマを凍らせた。
軽やかなメアリーの動きにこの場の時が止まったかのようにも思える程 誰もがピクリとも動かない。


−パキ…ンッ



真っ二つに割れたアクマの音を皮切りに周りも動き出した。






残るアクマはレベル4だけ。
メアリーはアレンとユウが激しい攻防戦をレベル4と繰り広げているのを
何処か遠くを見つめるようにして眺めていた。






「ジェイド。

今…いくわね……。」






目を瞑って思い出されるのは


ローレライとの


ジェイドとの

約束。




一週間以内に死ぬと言った、

絶対に帰ると言った。


いつもの約束である『行ってきます』も、この任務につくときは、言えなかった。


兄さんにも、リナリーにも
教団にいる誰一人に私は言えなかった。






「ごめんなさい……兄さん。
ごめんね、リナリー…。



ごめんね、皆……」



そう言ってメアリーはレベル4の銃撃に狙われたアレン達を庇うように身を投じた。




命を失うのは怖い。
けれど……


ジェイドに逢えないのは
もっと怖いの。



だから、ごめんなさい。


「!!メアリーッ!!!」




夥しい量の紅が部屋に散り


その紅は彼女の白い肌も緑の美しい髪も…黒の服さえも真っ赤に染め上げた。




<To be continued>
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