月夜に現るのは


不可思議な姿の怪盗…




Gからの予告状



クロスの事件から三ヶ月。


「…月日が経つのは早いわね…」


「…。そうだね。」


空はドンヨリとしていて先程からずっと雪が降り続けている。

パリの町並みを見て どこと無く、ケテルブルクを思い出す。



「……メアリー…!!行っちゃうよ!?」


遠くから会話をしていたはずのアレンくんの声が聞こえて、私は慌てて走り出した。



−ギュッ…ギュッ!


足を踏み出す度に 雪が鳴く。


「…っ…」


ねぇ、ジェイド……。
貴方は今、何歳になってしまったの…?

時間の進み方が、あまりにも違くて…。
戻り方も何も解らなくて…。


辛くて…、逢いたくて…。


気持ちがごちゃごちゃになりそうなの。



「メアリー。何してんだ。」


「…ユウ……」



途中から目を閉じて走ってたからか、ユウに手を引かれた。


なんだか、最近 ジェイドを思い出して、皆に迷惑を掛けてばかり…。


忘れようなんて思わないけど、
思い出し過ぎるのも 任務中には良くない。


「ごめんなさい…」


「…気をつけろ。もし戦闘になったりしたら死ぬぜ?」


「…ん、気をつける。」


ユウの言う通りね…。

気を引き締めなくちゃ。



「ここだな。」


「そうね、ガルマー警部はどこかしら…?」


「さぁな。」



辺りを見回しながら写真と一致する顔を捜す。


人が多過ぎるから、聞いた方が早いかもしれないわね……。



「院長先生には謝っといてあげるわ!いっとくけどコレ貸しだからね」



「お前…!その言い方母親そっくりだぞ!!」


声を掛けようとすると前方から
親子喧嘩と思わしき声がして
次には女の人が、私にぶつかった。


−ドンッ


「きゃ…っ」

「キャッ!すみません!」


「いえ、こちらこそ、ごめんなさいね…?」




「(あら美人…!隣には美形まで…!)」


「…あの…?」



ぶつかってきた女性は
メアリーと神田の顔を代わる代わるに凝視している。
たまらずメアリーは声を掛けたのだが女性には聞こえていない。


「…!あなたがガルマー警部ですね?」


困り果てていると 少し離れた場所に写真と同じ顔の男性が立っているのが見えた。



確認の為に名前を伺うとユウに敵意を飛ばしながら女性を押し退け、目の前に現れた。


「どなた?」


「あ゛?」



睨まれたユウが黙っているわけもなく
お互いに睨み合っている。



「ここに我々の身内が勾留されてると聞いたのだが…面会させていただけないか?」


「黒の教団!?なんだってアンタらがこんな所に…」



上手い具合にマリが 主旨を伝えてくれたからスムーズに話しが済みそうね……。




「この中のどっかにいるだろうから探してくれ」


ガルマー警部の言葉に皆が息を呑んだのがわかる。
そうよね……。この光景を見たら 誰だってそうなるわよね……。


牢の中にいるのは 一様に
瞳をあしらった大きな仮面(?)にGとかかれたピエロのような服という奇怪な姿。


この中に私達の身内がいるなんて…。



「警部、この集団は?」


「……。俺が捕まえた怪盗Gだ。」


「『怪盗G』…。パリを騒がしている怪盗よね…?」


「あぁ。」



だけど怪盗Gがこんなにいるなんて……。


「違う!!」



ガルマー警部が怪盗Gだと言った途端に牢の中の彼らが騒ぎ出した。



彼等の言い分は
自分はGじゃなくて、Gにされた、との事。


事実はガルマー警部が知るもの。
警部も真実だと気付いてはいるけど、認めたくない…ってところかしらね…?




「真実の中に潜む嘘。嘘の中に潜む真実……。」


「は?」


「警部。真実は何処に潜んでいるか、解りませんよ」



「……だが、」


「……そこにいるのは、エクソシストか!?」



警部の言葉を遮ったのは私達が探していた探索部隊。






「今回のイノセンスは『怪盗G』と関係してるぜ!」


探索部隊に交じり、科学班であるジジも任務に参加していたらしく
彼はそう言ってのけた。




確信のモトを聞けばボネール姉さんと呼ばれた……
所謂ジェリーと同類の方が現れた。


「『怪盗G』は人間じゃないわ…その名の通り『G』HOSTよ」



Gについてわかってる事は三つ。


着ぐるみの頭のようなものに目をあしらった仮面(?)と、ピエロのような服とマント…といった奇怪な姿と犯行前日に必ず送り付けてくる予告状。



そしてGには肉体が無い。



「……肉体が、無い…。確かにイノセンスかもしれないわね。」



でも、だったら……
誰かが適合してる。

イノセンスだけで怪盗のような行為を出来る筈がない。


イノセンス単品で出来るのは せいぜい奇怪現象。



これだけ他人を巻き込んだ犯罪を犯しているんだから……適合者はただの悪人か、もしかしたら幼い子供、ね。



「警部!!…また……」



保安官の震えた声と共に差し出されたのはアルファベットのGが紙一杯に書かれたもの。



「怪盗Gの予告状が届きました!」



己を律するように保安官が出した声は牢屋全体に響き渡った。



まるで……また、『怪盗G』が増える事を示すかのように。



<To be continued>
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -