疑う事は
信じる事より簡単で…


でも、仲間を疑うより、信じていたい。


だって
信じることの方が素敵でしょう?




疑うより、信じる



「クロス・マリアンは、この扉の先よ。入りなさい。」



着替えと拘束術をアレンくんに施し、私と鴉部隊は一つの部屋の前で立ち止まった。


「メアリー…、あの…」


「入りなさい。」


アレンくんの言いたい事は判るけど……。
今の私は聞いてあげる事ができない。
誤魔化すように扉を開けば重い音を立てて開かれた。




「!」



中にはクロスと鴉の4人。
クロスを確認した途端にティムが彼にピタリと寄り添う。


ここからは、私は一切口出しができないし、関わる事も出来ない。
だから私は、アレンくんが口を開く前にゆっくりと扉に背を向けて歩き出す。
向かうは長官と兄さんのいる部屋。


アレン・ウォーカーが仲間かどうかは、この二人の会話で判断される。



だけど、結果がどうであれ…
私は……



「…アレンくんを、信じてるよ。」




信じてる。
仲間だって。
例え 中央庁がアレンくんを敵だとみなしたのだとしても…。







−コンコン


「どうぞ?」


ノックをすれば中から聞こえる低く威厳のある声。
軽い筈の扉が 今は何倍もの重さになっているように感じる。
それほどに、長官が私は苦手。




「…失礼します。アレン・ウォーカーを無事、部屋まで連行いたしました。」



「ご苦労様です。メアリー・リー副室長。さぁ、座ってください」


ニコリと貼付けたような笑顔。
フルネームで呼んだ名前。

長官の全てが私を威嚇している。


「…は、い……」


「では、彼が話しをしている間…我々は別の話をしましょう。よろしいですね、室長。」



有無を言わせない、とでも言うように長官の声は格段に低くなった。
私も兄さんも逆らえずに
長官の向かい側のソファーへと腰を下ろす。



「で、話とは?」


「簡単な話です。室長。」


兄さんの精一杯の虚勢も長官にあっさりと崩され、彼の二つの鋭い眼差しは隣にいる私へと向けられた。


「…っ、…なんでしょうか…?」


「副室長。あなたは、教団を捨てるらしいですが…本当ですかね?」


「え…?」


「あなたがアレン・ウォーカーに話しているのをハワード・リンク監査官が聞いていましてね」



誤算だった。
そうよ…、アレンくんは監視されていたのに。
あの場に監査官が居ないからって…安心してた。
確実に私の落ち度じゃない…。



「世界を捨てる、それは教団を捨てると捉えて構いませんね」


肯定も否定もしない 私を見て長官は仮定を導き出す。
ただ、長官は世界=教団と勘違いしたみたいだけれど…。



「…そうです、と言ったらどうしますか…?」


「!?メアリー!何を…っ!」


「室長、あなたは黙っていてください。」


「……、っ」


「では、もう一つ。教団を捨てるのは好きな男性の為というのは?」



全部、…聞かれてたのね。
兄さんには まだ言うつもり、無かったのにな…。


「……事実、ですよ。全て。」


「なるほど」


「…私を、どうしますか?」



ばれてしまったからには
仕方がない。
少し挑発的に見れば意外にも長官はニコリと笑っただけだった。



「副室長。一つだけ言っておきます。裏切りは、許されません。」

「…判ってますよ。」



裏切るつもりなんて端からない。
私は仲間が大切だから……。



「そろそろでしょうね。副室長、迎えを頼みますよ。」


「……わかりました。」




まるで追い出されるように部屋を出た私は、アレンくんを迎えに行く。


「…………」


「…アレンくん…?」


見慣れた団服に身を包んだ彼は俯いていて顔が見えない。

何だか、先ほどまでは無かったオーラが彼を取り囲んでいるようにも見える。


「……あ、メアリー…?」

「……。顔、腫れてるわ。」

「師匠に殴られただけだから……。」


「……そう。大丈夫…?」



敢えて何が大丈夫なのかは聞かずに白い頭を撫でる。



「うん。なんでもなかったよ」



アレンくんは最初は驚いてたけど次第に全てを諦めたような顔をしてポツリと呟いた。



「…アレンくん。辛かったら言ってね。」


「…大丈夫だよ。ありがと、メアリー」


いつもより元気はないけれど…やっと笑ってくれた。


「あ…、メアリー。リナリーとジョニーだ」


「…、本当。待ってたのね、アレンくんの事。」


微笑みを零しながらアレンくんの背中を軽く押してあげれば
アレンくんは近くに合った毛布を持って二人に近付いた。




「アレンくんっ!?姉さんも!!」


そーっと近寄ったつもりなのに気配に敏感なのかリナリーが目を覚ましてしまった。


「リナリー、静かに。ジョニーが起きちゃうわ」


「あ、…。姉さん、兄さん達は…?」


「…まだ奥よ。」


「そっか…。」


私に聞きたい事を聞いて関心がアレンくんに移ったのかリナリーはアレンくんと多少の会話をし始める。


「…ねぇ、姉さん…?」


「?なぁに?」


「なんで、姉さんがアレンくんを連れて行ったの?」



責め立てるようなリナリーの瞳。耐え切れず窓の外に視線を向ける。


私だって、好きでやったわけじゃない。


「……仕事だったからよ。」


仕事だから、我が儘は言えないの。


「ごめんね、アレンくん。リナリー…」


「…私こそ、ごめんなさい、姉さん…」


仕事だって判ってるのに、と口にしてリナリーは俯いた。


何だか、今日は俯く子が多いわね。


「気にしないで。さぁ、もう寝なさい。」



ポムポムとソファーの後ろから座っているアレンくんとリナリーの背中を叩く。
一定のリズムで叩き続けるうちに二人からは寝息が聞こえてきた。



外を見れば今だに雨は降り続けたまま…―――――。



<To be continued>
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