気分的には
久しぶりの教団。




楽しみにしながら帰ると



壊滅寸前でした。




コムビタンD



「……え?」



これが 私の教団を見た第一声。


だっておかしいと思わない?


あちらこちらから爆発音が聞こえるのだけど……
これは一体……。






「ぎゃあああっ!!誰かーーーっ!!!」


教団に足を踏み入れてまず最初に耳にしたのは 迎えの言葉でもなければ労りの言葉でもなく絶叫。




誰か嘘だと言って欲しい。





せめて状況を説明をしてほしい。

どうして、教団員と思われる人達が唾液ダラダラで、牙を剥き出しにしながら走り回ってるのかしら。


きっと 今の状態で出て行っても駄目よね。
リアル鬼ごっこが始まってしまいそうだもの……。



「…兄さんの薬かしら…。
なら原液が備品室にあるわよね…。」



兄さんのせいだ、と決めつけて
私は隠れながら科学班の備品室へと向かう。




部屋へと行きつつ メアリーは世界を渡る前の状況を鮮明に思い出し始めていた。

本来なら忘れるものでもないのだが、ジェイド達との生活の楽しさからか…、メアリーは自分の世界の現状を少し忘れていた節があったのだ。


思い出して、ふと気付く。


「そういえば……、備品室って幽霊が出るって……」



ゾワリ、と背筋が震えた。
幽霊の類いはメアリーにとって禁物だった。

科学者といえど 幽霊だけは無理なのだ。


「……どうしましょう…」







行くか行かないか悩みながら進む内に部屋に着いてしまったメアリー。

「ここまで来たら、行かなきゃ…。」


覚悟を決めてドアノブに手を掛けた時 中から複数の声が聞こえた。

耳を傾けて聞くと憎悪の篭った女の子の声と兄さんの声だと解る。



女の子はこの城で亡くなったらしく
自分の名前も忘れ、実験をされて苦しかったと訴えている。


きっとその女の子は適合者の血筋で…使徒を作る実験をされた子供…。



「いいな…おまえもわだしと同じだったのに…。…うらやましい…。わだしにはおまえのように犠牲になっでぐれる人間はいながった…」




「もう、そういうのやめよう」



「犠牲じゃないわ。一緒に生きていく為に助け合ってるんだもの。私達は。」



女の子から犠牲という単語と兄さんの言葉を聞いた私は思わず扉を開けて言っていた。



驚いた表情の兄さんと眼が合った。



「でしょう?兄さん。リナリー。」



ニコリ、と笑えば兄さんは頷いてリナリーは呆然と私を見つめている。
何故か二人とも縄で拘束されていてリーバーさんに至っては……女の子(幽霊)が腹部から出てるけれど…。







ずるっ…!
異様な音と共にはい出た少女はメアリーを目指し真っ直ぐに進んでくる。


「…ゃっ!?」


「じあわせ…?いいなぁ
いいなぁ
わだじだってなりだいなぁ
いいなぁいいなぁいいなぁ」


メアリーの顔を掴んだ少女は呪文のように言葉を紡ぐ。

「おい!」

「何やって…」


コムイとリーバーの静止も虚しくメアリーの意識が少女に捕われた時 教団が地響きをあげた。


「だれもこの城から出すもんか…。おまえらはコムビタンDに侵されてずっどわだしと暮らすんだ。ヒヒヒヒ」


そして少女はメアリーの姿、メアリーの声で笑った。




「イテッ…!」

投げられるようにしてコムイ達は食堂へと連れて来られた。
周りにはコムビタンDに感染した人々が飢えたハイエナのように今か今かと食らいつける瞬間を待ち侘びている。

その中にはアレンや神田、ラビなどの見知った顔も見受けられた。


「ガアアアア!!」


コムイ達が状況を把握したのと同時に彼等は飛び掛かって来た。
逃れられない、そう感じたリーバーとリナリーが体当たりをくらわせコムイを守った。

そして散々コムイに文句を言い彼らも感染した。



「残るはおまえだけだ…」


コムイを地面に押し付けながらメアリーが嘲笑う。

「ケッ…ケイト・ブロリー!」


感染させようとした時にコムイが誰かの名前を叫んだ。
そして 数え切れない程の名前をあげていく。



そう それは過去 教団の実験で亡くなった人の名前。
コムイは名前を忘れたと言った少女の名前が あげた名前の中にあるはずだ、と言った。



「な…まえ…百年…ぜんぶを…?」


「……この十字架のもとに犠牲になったもの全部。僕が室長としてずっと背負ってくつもりだ。」


それだけしかできないけど、それだけはできる。
そう言い切りコムイは少女に忘れない、とそう伝えた。



「室長…おまえの…言葉、嬉じがった…」


メアリーは身体が軽くなるような感覚を感じた。
少女がメアリーから抜け出たのだ。


「ぅ…兄さ…?」


「メアリー!良かった…無事かい?」


「…えぇ…。」





実は少女に意識を取られながらもメアリーには全て聞こえていた。



普段と違う真剣な兄さんが
とても恰好よく見えた…。



「ウガァァァ!!」


「きゃぁっ!?」


「メアリー!!」



兄さんの顔を見ていて 背後にアレンくんが居ることに気付かなかった私は、そのまま噛み付かれてしまった。




再び意識が闇に呑まれてしまったため、そのあとの事は何も判らない。




ただ、解るのはバクさんが
コムビタンDのワクチンを作って中和してくれた事と
教団が本当に壊滅してしまった事くらい。




「メアリー!」


「兄さん…。仕事は?」


「うっ……や、やだなぁ。やってるよー」



教団が本当に壊滅寸前なので
引っ越しが予定より早めとなった。

ただ日にちが必要なのでそれまでは この教団で我慢、なのだけど……



「そういえば、兄さん。私、気になってたのよね。」


「何をだい?」


「どうして、私だけ最新の団服を…?」


そう この団服を着ているのはまだ私だけ。


「メアリーだから、かな。」


「………」


ジトーッと睨むように見つめれば兄さんは慌てて踵を返した。


「そうだ!メアリー、お帰りなさい。」



「!ただいま、兄さん…」



途中で振り返った兄さんは笑顔で言って去って行った。



<To be continued>
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