大人にとって




信じる事は



信じない事より



大変なのに……。


なのに貴女は
信じてくれました。


それが
どんなに私の救いになったか。



優しさに触れた日


「メアリー、今日はもう休んでいいわよ?」


「ありがとうございます、ネビリムさん」



ニッコリと笑顔でネビリムさんに御礼を言えば 「おやすみなさい」と 綺麗な笑顔が返ってきた。
私はそれに甘えて ネビリムさんから貸して貰っている部屋に向かう。


ジェイドとサフィールに案内されてネビリムさんの家に来たのが、もう何年も昔のように感じる。
だけど 実際はたったの一ヶ月しか経っていなくて、それは同時に私がこの世界に来た日にちでもあって…。


馴染むには短く 離れるには長すぎた期間。

この世界では一ヶ月でも
私の世界でいうと二ヶ月になる。



辛い 辛い 辛い
帰りたい 帰りたい 帰りたい


でも…
帰りたくない…



矛盾してる。



「…この世界の人は優し過ぎる…」



ジェイドもサフィールもネビリムさんも…


身寄りのない私に
ジェイドは知識を
サフィールは癒しを
ネビリムさんは職と宿を
与えてくれている。




だから私は
この世界に来て困った、と一度も思っていない。
困りたいわけではないけれど…
何かが腑に落ちなかった。


−コンコン


「メアリー、ちょっといいかしら」



「どうぞ。」


物思いに耽っていたところにノックが響いて意識が現実に戻ってきた。
ネビリムさんだ、と判断した時には既に私の口は開いていた。








「不安だったら言っていいのよ?」


彼女の第一声はそれだった。



「メアリーは違う世界から来てしまったんだもの。いくら貴女が大人びていてもまだ17歳なのよ。少しは大人に頼って、ね?」


この人は……
私の本心を確実についてきて
それに救われる私がいる。


「…ネビリムさん…少し、だけ…」


「いらっしゃい」



ネビリムの胸を借りてメアリーはこの世界に来て初めて泣いた。










「す、すみません…」


メアリーはグスッと鼻を鳴らしながらネビリムを見つめる。

ネビリムは微笑みハンカチを手渡すとメアリーの頭を撫でた。

ネビリムさんの手の暖かさは
まるで兄さんの手のようで
私の顔には自然と笑みが零れる。



「よし、もう大丈夫ね!」


「え、」


「メアリー、今自然に笑顔になれたわ。辛い事は溜めないで吐き出しなさい。」


「……はい、」



「さぁ、明日は早いわ。メアリー、目を腫らさないように、いいわね?」



扉を閉める前の悪戯めいたネビリムさんの言葉に私は笑いながら頷く。



今日はなんだか久しぶりにゆっくり眠れそうだ。

それも全部ネビリムさんのお陰。


明日は
ジェイドやサフィールと
沢山遊ぼう。


そう決意した日だった。




<To be continued>
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