知らない土地


知らない国


知らない生き物



何もかもが
私の知らない物ばかり…




不安が募る先に
出会ったのは貴方



馴れ初め





眼を覚ました。
いや 眼が覚めた、の表現の方が正しいのかもしれない。
とにかく 私は眼を開けて
状況を確認した。



まず、私は
イノセンスが発した光に包まれて……
多分、それで意識を無くしたのよね?


意識を戻した時に
辺りを見ようとしたけど
目は愚か口も開けなくて
身体は温度を失ったように冷たくて…………で?

気付いたら、知らない部屋に居た…なんて…
これは

「夢…?」


「夢、のわけないだろ。」


「!?」


自問で終わる筈だった言葉に
答えが返ってきた事に驚いて声の主を見ればハニーブラウンの髪に紅い瞳の少年が立っていた。



「あの……、」



「なんで町外れに倒れてたんだ?」


「え?」


「お前は町外れで雪に埋もれてた。何をしてたら、ああなる?」


「……」


少年の言葉に新事実が発覚。
私は町外れに雪に埋もれてたらしい……


だから あんなに冷たかったのね。



「おい、聞いてるのか?」


「あ、ごめんなさい。…私はメアリー・リー。あなたは?」


「………。ジェイド。ジェイド・バルフォア。」


「ジェイド、ね。最初から説明するから…取り敢えず、聞いてくれる?」







「……つまり、メアリーはエクソシストで 雪国には居なかったって事か?」


「えぇ、そうよ。少なくとも私が居た場所は森で季節は夏だった。……それに…ケテルブルクなんて地名、私が知る地図には無いわ。」



ジェイドと暫く討議を続けて解った事がひとつ。

私はこの世界じゃない世界から来たのかもしれないということ。

確証がないのは言葉が通じるから。
もしかしたら私が知らないだけで
ケテルブルクという地名はあるのかもしれないものね。


「…ケテルブルクを知らない、なんて変だ。」

「でも…イギリスを始めとしてアジアやユーラシア大陸…世界地図には載ってないのよ?」


「?イギリス?そんな地名はオールドラントには無い。」


「……オールドラント……。」



あぁ 本当に世界を渡ってしまったのかもしれないわ……



「ジェイド…、私の名前を紙に書いてみて」


「あぁ」


ジェイドは私の言葉に頷いて
紙とペンを取り出し 何やら丸い渦巻きのようなものや音譜に似たものを書いた。



「…なんて読むの…?」


「メアリー・リー。」


「……ねぇ、ジェイド…私…違う世界から来たみたい」



「……そうだな。」



私の言葉にジェイドはあっさりと頷いた。
もしかしたら多少の予想はしていたのかもしれない。




さっきのジェイドの肯定の言葉以来 この部屋は沈黙を保っている。
何故かといえば ジェイドは顎に手を宛てて何かを考え
メアリーもメアリーで困ったように眉を寄せて何処かを見つめていたからだ。


そんな沈黙を破る人物が一人……



「ジェイドーーっ…!!さっきの女の人は……!!」



バダン、と 例えメアリーが寝ていたままだとしても
跳び起きただろう大きな音をさせて扉を開けた銀髪の少年はジェイドに踏まれ泣き出した。


「うわぁぁん!ジェイドー、痛いよー!ごめんなさぃーー!!」


「五月蝿い。」


ぎゅむぎゅむと少年が泣く度にジェイドは踏む力を加えているのだが少年がそれに気付く事はない。
そんな可哀相な少年は困ったようにジェイドと自分を見る女性の視線に気が付いた。



「!!眼が覚めたんだねっ!よかったぁぁ…」



自分が踏まれている事も
忘れて少年は安堵の溜め息を漏らす。

「…あなたもジェイドと一緒に私を…?」


「うん!僕はサフィール。お姉さんは?」


「ふふ、私はメアリーよ。」


ニッコリと笑顔を交わすのだが
二人の和やかな雰囲気が気に食わなかったジェイドがサフィールを踏む足に力を入れた。


やはり、というべきか
当たり前だというべきか
サフィールが泣き出した。



「ジェイドーー!!やめてってばぁーーっ」


「ジェイド…、サフィールが可哀相よ…?」



話も進まないし、とニュアンスを含めればジェイドは納得してくれたのかサフィールから足を退けた。




「えぇっ!?じゃぁ、メアリーさんは違う世界から来たの!?」

サフィールにもジェイドと話したように 言えば 目を見開き口をポカンと開いた。

ジェイドとサフィール。
まだ知り合って 数時間も経たないというのに 何となく二人の性格や力関係が解った気がする。



「ねぇ…ジェイド、サフィール。私は何も解らないから頼れる人が貴方たちしかいないの。」


「う、うん…」


「……。ネビリム先生にも、話そう。」


「あ、そっか!流石ジェイド!」



ネビリム先生。
二人の話しを聞く限りネビリムさん、という人は頼りになる人みたい。


大人なら ジェイドやサフィールと違って 私に職をくれるかもしれないし…



「…メアリー、行くよ」



「え?ぁ、えぇ…」



私が色々と考えてる間に
そのネビリム先生のところに行く事になったみたいね。



二人に連れられて玄関を出れば
一面が銀世界。

雪道を歩きながらも
頭の片隅では ジェイドやサフィールが白いのは 雪国生まれだからなのね…と関係無い事を考えていた。





<To be continued>
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