05
頭が追いつかない。
目の前には、死んでいる姉に、さっきぶつかった青年。
しかもその青年は、私の名前を知っている。
『…ど、うして、私の名前…』
『君を捕まえろと言う命令でね』
『!?』
私を捕まえる!?
どうして?
『ああ、その顔は知らないって顔だね。まあ、そうか。僕も知らないし』
彼は何が言いたいのかが分からない。
『捕まえろっていう命令だけど、やーめた』
びくり
彼は、私に目線を合わせる。
白の手袋をした右手で私の頬を優しく撫でた。
『ひっ!』
『君、気に入ったから、今から君は僕のものね』
『っ、はい?』
『だから、君はもう僕のもの。その血も髪の毛も声も息もすべて、僕のもの』
頬を撫でていた彼の手が私の首元にまで下りる。
そのまま、首を絞めそうな勢いだ。
『あはは、僕は赤司征十郎。一応、この国の軍隊の元帥だ』
『っ!!!』
この歳で元帥。
軍の一番偉い人だ。
『…あ、ああ、あなた、』
『…うるさい』
ガツンッ…
首の後ろを叩かれ、気を失う。
かすかに見えたのは、不気味に笑う、赤司征十郎だった。
『(…それにしても、陛下はどうしてこんな少女を捕まえて来いなんて命令をしたんだ)』
腕の中にいる少女を見ながら赤司は思った。
『まあ、関係ないか。これはもう、僕のものだしな』
赤司に気に入られたら最後。
一生、離されない。
『名前、愛してるよ』
その表情は、恍惚したものだった。
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