03
ある、建物の最上階。
そこの階の一室に6人の青年がいた。
「…名前が逃げましたか」
一人は、諜報のスペシャリスト黒子テツヤ。
「ほんとに何で逃げたんスかねー。ここにいたほうが幸せなのに」
飲み込みの早い天才で、笑顔の殺し屋、黄瀬涼太。
「…お前らがちゃんと見張ってないのが悪いのだよ」
軍の脳として働く、緑間真太郎。
「はあ?だったら、緑間が見張ってれば良かっただろ?」
軍一の天才、暴れ馬の青峰大輝。
「……部屋かどっかに繋いで置けばよかったんじゃないの?」
軍の変わり者、紫原敦。
「…まあ、落ち着けお前ら。逃げたものはしょうがない」
そして、
「逃げたら、捕まえる。それでいいじゃないか」
この軍の元帥、赤司征十郎。
赤司は、軍服についているマントをひるがえし、5人を見つめた。
「捕まえる、ですか。まあ、当たり前ですけれど…」
「はいはいはーい!俺が、行ってもいいっスかー?」
黄瀬が犬のように尻尾を振りながら手を上げているように見えるのは、気のせいではないだろう。
「…だめだよ。まずは作戦を練らなきゃ。女の子の名前でもこの軍に居たんだから知恵はあるし、技術もある」
「赤司の言うとおり、中々捕まえられなさそうなのだよ」
そうだ。
逃げた身といえども、彼女はこの幹部に入るくらいの力がある。
そんな簡単に捕まえられるはずがない。
「…そこで、まずは城下に出て名前の行方を調べるのだよ」
「そこで、ばったり名前ちんに会ったらどうするのー?」
「…それは、」
緑間が考えあぐねていると、赤司が口を開いた。
「そしたら、捕まえろ。どんな手を使ってでも」
「!マジかよ!あいつとヤれんのかよ」
「大輝、ただし、殺したりはだめだよ。生きててもらわなきゃ意味がない」
「怪我はいいんスか!?」
「…まあ、名前相手に無傷で捕まえろってのは、無理だが…でも、僕以外が名前に傷つけるのは嫌だな」
その言葉には、だめだという意味が込められていた。
「まあ、とりあえずは一通り分かりました。それで、どうやって僕らを動かすんですか?」
「それは、二人一組だ。テツヤと涼太に大輝と真太郎。そして僕と敦だ」
命令を聞いた彼らは、立ち上がりその場にひざまづく。
「「「「「仰せのままに、ご主人様」」」」」
それは、確かな忠誠だった。
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