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おびただしいほどの血。
目眩がするほどの血の匂い。
――――――
さて、頭が追い付かない。
これは罠で。
3人は日嗣に銃口を向けていて。
そして、日嗣の両親と妹を殺したのは大輝で。
ああ、混乱している。
「――――俺は、覚えてねーよ。殺した奴の顔なんか」
その一言で日嗣の何かが切れたらしい。
大輝に向かって殺気を放つ。
「ふざけるなふざけるなふざけるな!!!!!お前が殺したんだ!!!お前が!!お前が!!!それを覚えてないだと!!!!ふざけるのも体外にしろよ!!!!」
静かな夜に日嗣の叫びが響く。
それが嫌に耳に残る。
「――ねえ、本当にさ」
私は、剣を支えに立ち上がる。
皆の目が私を見た。
「ふざけた茶番だね、これは」
もう感情なんてどこにもない。
「ほんとに、さ。私をどれだけ絶望させればいいの。私はこんなになるために逃げたわけじゃないのにな」
天を見上げた。
そこには月がもう真上に差し掛かる。
夜が来る。
「みんな、嫌いだよ。大っ嫌い。出会いたくなかった」
ざくり、と剣を突き刺し地割れを起こす。
名前の言葉に気を取られていたのか幹部3人は反応が遅れた。
「ほんとにさ、」
地面を強く蹴り、敦へと向かう。
地割れの対応に困っているのか私には気づいていない。
「最低」
剣を振りかざし、下ろす。
その単純作業で人を殺すことのできるなんて、なんて残酷な。
「うっああああああああああ!!名前ちんんんんんん!!!」
痛々しい敦の声が響いたが、気にせずにもう一度剣を振り下ろす。
返り血が自分にかかろうとも何とも思わなかった。
「っ、名前っち!!!」
真太郎の能力を使い死角に飛び込んできた涼太も剣で受け止める。
「名前っち、どうしちゃったんスか?っ、名前っち、らしくないっスよ!?」
「ねえ、涼太。私って何?」
「へ―?」
ザシュッと涼太の脇腹が切れた。
血が噴き出る。
「くっあっ…!!!」
「ねえ、なあに?」
ザシュ、もう一度音が聞こえた。
それは背中を斬った音であった。
「――お前は、鳥だよ」
低い声が聞こえた。
そして、一瞬風が切れる。
大輝の首筋に当たる私の剣。
私の額に当たる大輝の銃口。
「私を殺せるの?」
「殺してほしいのかよ」
「……まあ、そうだね。これ以上私は苦しみたくないから」
チャキ…
固い。
銃口は堅い。
「大輝っ!!!!!!!!」
「!?」
名前を大声で叫び、素早く斬りつけた。
あと少しのところで交わされる。
「死にたいんじゃないのかよ」
「私、まだ、死ねない理由があるんだよ!!!」
ピッと大輝の頬から血が出た。
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