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君は希望だった。
僕にとっての希望だった。
この一族の希望だった。


『――――ねえ、私ね。きっとこの家族が好きなんだ』


君の幼い笑顔がまぶしかったのを覚えている。


――――――


走る。
走る。
足がもたれそうでも走る。
銃声が聞こえた方へと走っていた。


「はあっ、はあ…!」


息が切れる。
ある路地を曲がったところに名前の後姿が見えた。


「名前!!!!!!!!!!」


弾が名前へと撃たれる。
僕は思わず名前にとびかかる。


「――あ、ひつ、ぎっ!!!!!!!!」


寸のところで弾を逃れられる。


「名前!!!」


「日嗣…なんでここに…」


「そんなことはどうでもいいよ!ねえ、なんで逃げないの!?避けないの!?」


「だって、日嗣、私…」


「だめ!!!生きてよ!!!僕を置いて逝くなよ!!!!」


名前の目が見開かれる。
その目からは涙が零れていた。


「ひっ、つぎ、私…」


その時だった。


ガチャ


3つの銃口が僕を捕えた。


「――――海の匂いがすると思ってたら、本当だったんだね。不破、日嗣」


紫の巨体が冷たい目で見降ろした。


「生き残ってたんスねー。本当に。名前っちから離れろよ」


黄色は笑ってはいるが殺気が痛い。


「はあ、やっと出てきたか。待ってたぜ?」


青がニヤリと笑った。
それを意味するのは…


「ねえ、まさか。嵌められたの?私たち…」


正解を名前が呟いた。


「そうだぜ?だって、名前はこいつがいるから、『不破』の血から離れられないんだろ?だったら、殺すまでだ」


冷たい刃のように言い放った。
そんなこいつを覚えている。
いや、他の二人も。


「―――確か、お前だったよ。僕の両親、妹を殺したのは」


覚えている。
いや、忘れられるはずがない。
目の前で笑いながら殺す人を。
笑いながら僕の家族を殺した人たちを。



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