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これまでに聞いたの中での最上級の否定だった。
「私は、もう君たちに失望したんだよ!!!」
睨み付けてくる名前に少し狼狽えた。
「お、前。何言ってんだよ…まさかっ!!!」
紫原と黄瀬も動揺している。
「最低。ひどい。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い」
「―――なよ、」
「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い」
聞きたくない聞きたくない。
「言うなっ!!!!!」
思いのほか大きな声が出た。
目の前の名前は目を見開いて止まる。
まるで、全てが停止したかのような時間が流れた。
「――――知ってんだよな?俺らがお前の一族を皆殺しにしたことを」
「聞いた」
「ん?聞いたってまさか、生き残りに会ったんスか?」
黄瀬が聞いた。
「会ったよ。君たちへの憎しみがたくさんあった。伝わってきたよ」
「そうっスか」
黄瀬が銃を肩にトンッと押し付けた。
「私は君たちが本当に最低な人間たちだってことが分かったよ」
「――――それについては否定できないね、それは名前ちんもでしょ?」
「…え?」
紫原の大きな巨体が名前に一歩近づく。
「だって、俺らのこの手は血に濡れているんだよ。そう、名前ちんの一族皆殺しよりもずっと前から」
名前が手のひらを見る。
そこにはべっとりとした己の血がついていた。
「名前ちんが否定することなんてできないはずだよ」
ガチャリと紫原の銃口が名前を捕えた。
「…あ、つし」
「ねえ、お願い名前ちん。もう追いかけっこはやめよう?俺と一緒に来てよ。ついてきてよ」
「あ、つし」
名前の顔が涙でぬれる。
俺の撃った弾のせいで腹から出る血が止まっていない。
「ねえ!!!!」
パンッと弾が撃ったのが分かった。
名前は避ける様子もないらしい。
「名前、」
こんな無気力な名前を見るのは初めてだった。
あの日、お前と出会ってから初めてで。
あの時、黄瀬に追いかけられて俺の服を掴んで。
俺を頼ってきたあの手を、あの感触をまだ消せずにいた。
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