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「――――そんな名前っちもかわいーっスよ」
横から声が聞こえた。
慌てて目線だけ向けると、私に銃口を向けている涼太がいた。
「涼、太」
「久しぶりっスね!もう、俺、会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて…」
目が昏い。
そしてニヤリと笑う涼太。
「俺、死にそうなくらい寂しかったんスよ?」
ゾクリ、と鳥肌が立つ。
彼らはなぜそこまで私に異常な愛をぶつけるのか。
どうせ聞いたって、答えなんてわかりきっている。
「――――私は、許さないよ」
「それは俺たちのセリフだよ?名前ちんが俺らから逃げて許せないよ?」
敦はポケットからお菓子を取り出し、食べ始める。
「それにしても、名前っちひどい血っスね」
私のワンピースを見て思ったのだろう。
「君たち仲間のせいでねっ!」
剣を突き刺し、地割れを起こす。
今はテツヤがいないから能力はふんだんに使える。
「名前っち忘れたんスか?」
涼太は、他人の能力をコピーできる。
「そんなことちゃんと覚えてるよ!!!」
ガキンッと剣と剣がまじりあう音が響く。
月明りだけが私たちを照らしていた。
「あはは!よかったっス。それにしても良く受け止められたっスね」
「伊達に、テツヤと訓練してなかった、よっ!」
剣で涼太を押し切る。
そしてある程度間を取る。
「それは、ちょっと黒ちんに嫉妬するね」
にこり、と敦の笑った顔が見える。
「俺の能力も忘れたわけじゃないよね?」
ちっとまた舌打ちをする。
敦は幻覚を人に見せることができる。
敦が血を流せば攻略できるのだが、それが難しい。
「…ほんと、厄介な二人だよ」
「褒め言葉として受け取っておくっスよ」
剣を振りかざし、迫ってきた涼太を受け止めようとした時だった。
「ばーか」
一言、声が聞こえた。
まずい。
これは最悪な状況だ。
「っ!!!!大輝っ!!!!」
パンッと弾が放たれる。
だが、目の前には涼太が迫っている。
どちらも防げることなんてできない。
私は、来る痛みに覚悟することにした。
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