41


すっかり、日は落ち月が昇り始めた時間帯、ある小道を黄瀬と青峰と紫原が歩いていた。


「はー、名前いねーなー」


「そうっスね」


「んーでも、名前ちんの匂いはするんだよ?しかも、血の匂い」


「ほんとかよ、紫原ー」


町を練り歩く、男三人。
しかも全員背が高い。
通る人みんな、彼らを警戒している。


「ほんとだしー、なに?俺に文句あんの?」


「ねーよ。強いて言うならさっさと名前を見つけろってことかな」


「は?」


「ちょーっとストップストップ!!ここで喧嘩はやめてほしいっス!!」


今すぐ、銃が出て弾が飛び交う状況になりそうなところを黄瀬はとめる。
ここで騒ぎ立てたらいろいろとまずいからだ。


「まあ、でもよ。名前があの一族皆殺し事件の生き残りなんてなー」


「さすが名前っちっスよね!」


「みんな殺してたと思ってたんだけどねー」


物騒な会話が夜の街に響き渡る。


「まあ、でも生き残ってくれてよかったぜ」


青峰の言葉に二人は頷く。


「―――っ、ちょっと待って」


「?なんスか?紫原っち?」


ふと、止まった紫原に黄瀬が疑問を投げかけた。


「――――名前ちんの血の匂い」


どこからか強い匂いがする。


「そして、海の匂い」


「海の匂いだ?」


海の匂いにピンッと二人はひらめく。


「海の匂いって、まさか…」


「――――名前ちんだけじゃなかったみたいだね。生き残り」


紫原は、懐から銃を取り出すと銃口を真上に向けて発砲した。


パンッ


音が町全体に響き渡る。
どこかしらで名前も聞いているはずだ。


「―――んじゃま、合図を鳴らしたところで」


「始めるとするっスかね」


「そうだねー」


それは、月が真上へと昇り始める時間帯のことだった。


[*prev] [next#]