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綺麗な空色の瞳が陰った。


「―――――はあ、嫌ですね。この展開は」


ぼそりと呟いたのは軍の幹部の一人、黒子テツヤ。
その周りには、軍幹部の一人でもある緑間真太郎と総帥である赤司征十郎がいた。


「どうしたんだい?」


「いえ、僕の中ではもう名前は捕まっている予定でしたので」


「ああ、なるほどな。でもしょうがないだろう?名前なんだから」


「…そうですね」


黒子は剣をなぞりながら、肯定した。


「――――それで、名前がこの国で有名な、かの不破家の一員なのか?」


緑間が、木に寄りかかりながら聞いた。


「そうだよ。敦が調べてきてくれたからね」


「なら、あいつの剣の才能も頷けるのだよ」


神話のようにもなっている不破家だ。
天賦の才だろう。


「―――でも、その不破家の一族を滅ぼしたのは誰ですかね?」


黒子の言葉に赤司はニヤリと口を歪ませた。


「さてな、昔の話だろう?でもまあ、まさか名前がその一族だとは思ってなかったからね」


「……お前のことはもう信用できないのだよ」


「あはは、ひどいね、真太郎」


カツンッと靴が鳴る。


「真太郎、分かってるよね?僕の言う言葉は絶対だって」


「っ!!!」


ものすごい殺気に目を見開く。


「次こそ、捕まえてこい。もう、夕方になる。あと、32時間だ」


「っ、分かっているのだよ」


ごくり、と唾をのんだ。
冷や汗も流れている。


「テツヤも分かっているね?」


「はい、」


「だったらいいよ。さあ、名前を探してきな」


赤司の言葉で二人は、バラバラの方向に別れた。


「―――…あーあ、早く僕の元においでよ名前」


赤司は、夕暮れの赤く染まった空を見上げた。
さっきまでの真っ青な空は消えていた。


「あはは、真っ赤に染まって染まって、そのまま壊れてしまえばいいよ。そして、僕らにしか頼れない名前になればいい」


だんだんと空の赤が真っ赤に染まり、そのまま黒く染まろうとしていた。


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