38
嫌になるくらいの青い空に涙が出そうなほどきれいな青い海だった。
「……うっ、」
「あ、起きた?」
チリッと痛みに気づき、意識を戻す。
すると、先ほど聞いた声が聞こえた。
見渡すと知らない部屋。
きっと彼の部屋なのだろう。
私は、ベッドで寝ていた。
「一応、止血と手当てはしといたよ」
包帯が巻かれている首と背中。
「……、あんま、体とか、見て、ないから……治療のためだからしょうがなく見ちゃったかもしれないけど…っ」
照れながら言う彼に、少し笑ってしまう。
「別にいいよ、ありがとう。ねえ、貴方のお名前は?」
彼は私の横に座り、ふわりと笑った。
「僕は、不破日嗣」
「ふわ…ひつぎ…!?」
彼の名前に目を見開く。
「え、なんでそんな驚くの」
「だって……」
「ああ、何?カッコいい名前で驚いた?」
「ちがっ」
「違うのかよ。それで?君の名前は?」
彼の笑顔が、何故かモザイクがかかる。
黒く染まる。
染まりそうになる。
「私の、名前は…」
「うん」
「…わ、…」
「え?」
「――不破、名前」
彼の目が見開かれる様子がスローモーションのようにゆっくりと見えた。
「―――――え?」
綺麗な青の瞳が見開かれる。
懐かしい、海の匂い。
黒く染まる。
「―――不破…?名前…?」
彼の手が私の頬を優しく撫でた。
「っ、生きてた、」
深い青の瞳から涙が零れ落ちた。
「やっと、見つけた…」
沢山の感情がこもっていた。
その声が、涙が全てを語っていた。
「やっと、やっと…!!!」
軍の幹部たちのような狂った瞳じゃない、綺麗な純粋な瞳だった。
その瞳につられるように私も涙を流した。
「不破の、生き残りが…!!!!」
その言葉と同時に強く抱きしめられた。
なぜか、彼の腕の中が心地よく思えた。
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