01
その日の朝、少女は覚悟を決めた。
「…今日、実行しよう」
逃げられるはずがないと分かっている。
だが、もう限界だった。
少女がいる部屋は、広くそこには、たくさんの物であふれ返っていた。
「……見渡す限り、物だらけ。私は愛玩動物かっての」
…ああ、愛玩動物か。
彼らにとって、私はそんなものだ。
「…さよなら、しましょう」
少女は、白いワンピース姿で立つ。
まだ時間は、早い。
誰も起きていないだろう。
「私の味方は、この子だけ」
ぎゅっと少女は、不釣合いの刀を抱きしめた。
そして、強い視線を窓へ向ける。
「(…この階は、3階だけど。飛び降りれるだろう)…行きますか」
少女は、窓に足をかけたときだった。
バンッ!
「名前っち!おはようっスー!!って、アレ?」
「っ!涼太っ」
まさかここで同僚の黄瀬涼太が入ってくるとは。
鍵を閉めておけば良かった。
「何してるんスか!?」
「……私は、逃げるの。じゃあね、『黄瀬くん』!」
「!?!?」
少女は、彼にふわりと笑顔を向けて飛び降りた。
「っ!名前っち!!!!!!」
急いで覗くと少女は、すでに地面に着地していた。
まずい、彼女が逃げた。
俺らの唯一の存在が逃げた。
「みんなをたたき起こさなきゃ!!!」
少年は、慌てて少女の部屋を出て行った。
‐‐‐‐‐‐
「…名前が逃げた?」
青の髪の褐色の男が声をあげた。
「そうっス!!窓から出て行ったんスよ!?」
「…名前ちんが逃げるとはねー…」
ぼり、とお菓子を食べている紫色の髪の人。
「…鬼ごっこですか。だったら、捕まえればいいだけの話ですよね、赤司くん」
「そうだね、テツヤ。名前を逃がすはずがない」
にやりと笑った、オッドアイの彼の瞳には何が写っているのだろうか。
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