34
首から血が垂れる。
真っ赤な血が真っ白のワンピースに付着した。
「どうやって逃げる…?そんなの、死ぬ気で逃げるんだよ!!!」
剣を持ち直し、テツヤに向かって走り出す。
そんな私に対して、テツヤは口の端をあげた。
「――…本当に馬鹿な名前ですね」
その時、ふと後ろに気配を感じた。
私はテツヤへと向かうのを止め、後ろを振り返る。
そして、斬りつけた。
「っ、ぐあっ…!!!」
緑の髪が揺れた。
「!真太郎…!!」
「緑間くん!!!」
そこには、私が斬った傷跡を右手で押さえる真太郎の姿があった。
右手からは止められない、血が流れていた。
「っ、はっ、よく、分かった…のだよ」
「……真太郎は、自らの能力じゃなくてテツヤの能力を使ったから…」
ぽたり、と右手に持っている剣から真太郎の血が落ちた。
「っ、なるほど、な…でも、それでも名前は愚かなのだよ」
「…え?」
真太郎の言葉に目を見開く。
左手に持っている銃の銃口が私をとらえる。
「撃つの?」
「撃つのだよ」
「私、死ぬの?」
「死なないところに撃つのだよ」
私も血の付いた剣を真太郎に向ける。
ぽたり、とまた血が落ちた。
「――――愚かなのですよ」
その言葉が聞こえた瞬間だった。
後ろに気配がしたと思ったら、背中に痛みが走った。
「―――っ!!!」
血が出るのが分かった。
「名前、僕はずっとずっと君のことだけを想ってました。初めて君を目にした時から」
「テ…ツヤ…」
剣を地面に突き刺し、体を倒れないよう支える。
「でも、僕の目の前から逃げる名前を見ているのはもう嫌なのですよ」
「っ、はあ……テツヤっ…」
血が止まらない。
流れているのが分かる。
「名前、さあもういいでしょう?大人しく捕まってください」
手を差し伸べるテツヤ。
その瞳はひどく熱がこもっていた。
「緑間くんも黄瀬くんも青峰くんも紫原くんも赤司くんも待っていますよ」
ああ、テツヤのそんな瞳を見るのはいつ振りだろうか。
[*prev] [next#]