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テツヤの剣で切られた頬から血が流れるのを感じた。


「――今回は一筋縄じゃいけないことを分かっているでしょう?」


「分かってるよ。怖いくらいにね」


ぎり、と愛剣を掴みなおす。


「なら、大人しく僕に囚われるのみですよ」


その瞬間、空色が消えた。
目の前にいたはずの空色が消えたのだ。


「っ、どこよっ」


私は、剣を地面にさし自分の周りを囲むように地割れを起こした。


「っ、はあ、はあ…」


ぐいっと、頬をの傷を手のひらで拭う。
手のひらに自分の血が付く。


「血が、」


「名前、」


「!!!!」


すぐ近くで声がした。
振り返っても、テツヤの姿はない。


「なん、で…」


「僕は影です。そして、僕の剣の能力を忘れましたか?」


「どこに、いるの!!」


どこからか声が聞こえる。
だけど、テツヤの姿はどこにもない。


「……ねえ、なぜあなたは逃げたのですか?」


「……何度も答えたけど、君たちの愛が重すぎたから」


ふと、テツヤの匂いがした。


「分かりませんね。あんなにも狂おしいほどに愛していたのに。これだけの愛情がもらえれば幸せでしょう?」


「確かだったのは、幸せではなかったということだよ。テツヤ」


チャリ、と剣の音がした。


「――許されない行為ですね」


耳元で声がした。


「許されない行為…?」


「ええ。僕らに対する許されない行為です。貴女はただ、僕らの愛を受け入れるだけでいいのですよ。返そうとしなくてもいいのです」


その瞬間だった。
テツヤの剣が首に当てられ、後ろから抱きしめられた。


「それだけで、僕らは十分なのですよ」


「……テツヤ、」


「さあ、名前。これであなたの負けですよ。大人しく捕まれば五体満足でこれからは過ごせますよ」


「……そんなことなら、負けない」


遠心力を利用して、後ろにいるテツヤへと剣を向ける。
首に当たっていたテツヤの剣が私の首を切る感触があった。


「……だったら、どうやって僕に勝つんですかね」


テツヤの声がひどく耳に残った。


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