28
遠くにいた征十郎の声が耳元で聞こえる。
敦は、私の地割れを何とも思っていないようでお菓子を食べながら私を見ている。
「名前」
低く、どこか体がうずくような声で囁かれた。
耳に暖かい息がかかる。
「僕らから逃げてる名前もかわいかったからそのままでも良かったんだけどさ」
征十郎の一言一言が怖い。
「そろそろ限界なんだよね」
「…え?」
「限界、なんだよ。君がそばにいないと僕ら壊れそうなんだ」
ぺろりと耳たぶを舐められた。
その行為に嫌でも反応してしまう。
「だからね、名前」
その瞬間だった。
パンッ…
銃声が響き渡った。
目の前には銃口を私に向ける敦。
その銃口からは煙が出ていた。
「……え、」
まさか、撃ったのって敦…?
ふと私の脇腹が熱くなるのを感じた。
手で触ると、ぬめりとした感触が。
「名前ちん、ごめーん」
手についたのはどろりとした私の血。
「え、なん、で…」
私は目を見開くことしかできない。
それよりも意識が薄くなってきた。
「…名前、ゲームをしようか」
征十郎はこの状況で提案をしてきた。
薄れゆく意識の中、必死に征十郎の声に耳を傾ける。
「ゲー、ム?」
「そう。君は敦の銃に撃たれた。敦の銃はじわじわと体力やら何もかもを吸い尽くしてしまうからね」
にこりと征十郎が笑った気がした。
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