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軍の本部の最上階にある一室でこの軍の元帥が優雅に紅茶を飲んでいた。


「……名前が逃げてそろそろ一週間ちょっと経つな」


僕が捕まえてきた兎が逃げるとは思わなかった。
そう思っていると、ガチャリと扉が開いた。
そこには紫色の髪の敦が立っていた。


「赤ちーん、調べてきたよ」


「お疲れ、敦。それで、結果は?」


敦には、名前について調べてもらっていた。


「名前ちん、すごいよー」


「なにがだい?」


「名前ちん、この国でもっとも特異な体質を持っているんだよ」


敦の言葉に僕は、思考をフル回転させる。
特異な体質…?


「…不破って名字だったよね」


「そうだよー。思い出した?」


思い出した…?
と言うことは、僕は耳にしたことがある名字だということだ。


「えー赤ちん思い出せないの?この国の昔話ー」


ああ、そういえば。
この国にはある昔話がある。
この国にはある特別な一族がいて、その特別な一族は不老不死の体質があるらしい。
その一族の血を飲めば1年。
その一族の肉を食らえば10年。
その一族の命を食らえば100年。
その一族の骨の髄まで跡形もなく食らえば不老の身体になる。
その一族の加護がもらえれば、平和な世が送れるだろう。
そんな本当にあるのかと疑いたくなるような昔話。


「…まさか、その昔話が本当だなんて言わないよな」


「その話は、実証されたわけじゃないからねー。でもさ、名前ちんってその家系らしいよ」


「!!!!」


ああ、そういうことか。
何も知らないような真っ白で純粋な少女が何故、陛下に追われていたのか。
ようやく納得した。
そんないわくつきの少女はさぞかし欲しいだろうな。


「くくく、」


「赤ちん?」


「あはははは!名前、最高だね!尚更欲しくなった!」


今すぐ捕まえて、君の血でも飲もうか。
それとも指でも食べようか。
ここから逃げる足なんて要らない。
だから足も食べてしまおうか。


「……でも、名前ちんを食べるのは俺だからねー?」


「僕にはくれないのかい」


「んー…まあ赤ちんならいいよー」


敦は、ポケットから出した飴を舐めながら行った。
ああ、そういえば言い忘れていた。


「敦、今度は僕らが名前を捕まえに行くぞ」


すると、敦の目つきが変わった。


「りょうかーい」


さて、僕の兎はいつまで逃げ切ることが出来るやら。


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