22


ずっとずっと部屋の中。
ここに来てから1年と言う歳月が経っていた。
たまに外に出してもらえるけど大抵は部屋の中だった。


『…部屋から出るのを許されてるのは稽古のときだけだし』


そう、みんなとの稽古のときのみ。


『それにしてもこの部屋は広くて物で溢れ返ってる』


私が寝ている間に置いていくのだろう。
ここに来た当初は、片付けたりしてたけど今ではそれもめんどくさくなった。
彼らは、私に何を求めてるのだろうか。


『…彼らからはたくさんの愛はもらっている』


それは、自分でも分かっている。
だけど、家に帰して欲しい。
私の姉を征十郎に殺された。


『いっそのこと逃げてしまおうか』


いや、それは無理だ。
彼らはすぐに追いかけてくるだろうし。
ここから出るのも難しい。
そのとき、部屋がノックされた。


『…どうぞ』


『失礼いたしますね』


入ってきたのは、黒子テツヤだ。


『…テツヤ』


『数日振りですね。どうです?元気でしたか?』


テツヤの言葉に唇を噛みしめる。
元気?
元気なはずないでしょう。


『……ほんとに、いつまで閉じ込めるの』


『名前、君はよく脱走していましたからね。そのツケが今来たのですよ』


ほんと昔の自分がいやになる。
それよりも、これはチャンスだ。
テツヤ一人だから、逃げやすい。
いつもだったら二人で来るとかだから逃げにくかったけど、今は。


『ツケ、ね…』


私はそっとベッドから下り、テツヤに近づく。


『そうです。昔も今も大人しくこの部屋の中にいればいいんですよっ!?』


『…私の勝ちよ、テツヤ』


私は、テツヤの後ろをとりテツヤの首に腕をまわす。


『……名前、あなたは今も昔も変わらないようですね』


『は?』


何が言いたいの?


『そんな馬鹿で愚かな名前を愛しているんですけどね』


そのとき、ふと私の背中で気配がした。
まさか。


『…名前ちん、捕まえたー』


ぎゅうっと2m越えの身長を持つ敦がテツヤごと抱きしめた。


『なっ!!!敦!!』


『もう、名前ちんたらー。黒ちんの能力忘れたわけ?』


ほんとに油断していたよ。
まさか、ここで能力を使うなんて思わないじゃん。


『はいじゃーそんな名前ちんにお仕置きー』


ぐいっといとも簡単に持ち上げられベッドに戻される。
敦の後ろにはテツヤがいる。


『じゃあ、お馬鹿な名前ちんに甘くとろけるお仕置きをあげるねー』


ああ、もう私は逃げ出さないほうがいいのだろうか。
ずっと我慢していたほうがいいのだろうか。
それが解決できる日なんて来るのだろうか。


[*prev] [next#]