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パンッパンッ


避ける体力もない私は、さっきから放たれている涼太の弾に撃たれていた。
だが、致命傷となるものは一つもなく、すべて掠る程度。
わざと狙ってるんだから、性格の悪さが出てるよね。


「ちっ」


私は、地面に剣を突き刺す。
そして地面で私を囲むように壁を作った。
他人の能力をコピーできる涼太でも、さすがにこんなことはできないと分かっている。


「…血が出すぎてる」


止血しなきゃ。
だけど、手が震えて出来ない。
涼太の弾に当たりすぎた。
毒の回りがひどい。


「そんなところに隠れたって一時の休息でしかないんスよー?」


笑いながら言う涼太。
状況を思い出せ、涼太は私の7メートル先に、テツヤは私の後方10メートル先にいた。


「…だったら、イチかバチか」


私は再び地面に剣を突き刺す。
全ての力を剣に注ぐ。


「これで捕まったらしょうがない」


私は、地中深くへと潜り込んだ。


「名前っちー?」


涼太の声が遠ざかる。
よし、このまま行けば。


ドゴォォォンッ


大きな音と砂埃を上げる。


「…テツヤ」


「げほっ!?名前!?」


私は、テツヤの首に腕を巻きつけて剣をかざす。


「ごめんね、私の勝ちみたい」


スッと腕を斬ると血がにじみ出る。


「これで、影を薄くするのは無理になったね」


「…油断しました」


砂埃が晴れた先に見えたのは、こちらを見て目を見開いてる涼太。


「…私の勝ち、よ、涼太!」


「ちっ」


涼太が低く舌打ちをした。


「もう、会うことが無いと祈ってる」


最後に私はテツヤの剣をはじき、遠くへとやる。
これでもう、無理だ。
触った感じ、銃も持ってなさそうだし。
私は、震えた足に鞭を打ち、走って逃げた。


‐‐‐‐‐‐


「あーあ、逃げちゃったっスね」


「はあ、黄瀬くんのせいですよ」


「だって、黒子っちの作戦が」


「もう、いいです。戻りましょう」


二人は、名前が逃げたのに余裕な笑を浮かべていた。
それはそうだ。
だって彼らはわざと名前を逃がしたのだ。
彼ら二人は、軍へと戻って行った。




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