16


大輝と真太郎の教訓を生かし、外を歩くときは剣を持つようにした。


「……え、私が?」


「ええ。隣町まで行って来てほしいの。私もこの身体だから遠くまで行けないし」


「わかった。代わりにこの手紙届けてくるよ」


隣町に住んでいる静音おばあちゃんの友人に手紙を届けるというお使いを頼まれた。


‐‐‐‐‐‐


さすがにまだ軍のやつらも行動を起こせないだろう。
私は、シャツに暖かいロングスカートを履いて、ロングブーツで隣町まで急ぐ。
隣町まで行ったらさすがの軍でも追いつかないだろう。


「…このまま行けば大丈夫」


ぐっと剣を握り、安心するよう自分に言い聞かす。
もう少しで、隣町だ。
そう思ってた矢先だった。


パンッ


「!?」


銃声が聞こえた。
まさか、もう!?


パンッ


「っつ!!」


2発目。
その弾は、私の右腕をかすった。
血が出るのが分かる。
白のシャツが血で真っ赤になる。


「誰!?」


辺りを見回すが誰の気配もない。
銃と言うことは、大輝か真太郎か涼太か敦。
それか、ありえなくはないがテツヤだ。


「…っ」


私は腕を庇いながら走る。


パンッ


「っ!!!」


3発目が私の頬をかする。
頬から血が滴り落ちるのが分かる。
気持ち悪い。


チャキッ


「――お久しぶりですね、名前」


「!テ、テツヤ」


いつの間に!?
私の首元にあてがわれるテツヤの愛剣に冷や汗が流れた。


「さすがの名前でも僕の影の薄さには気づけませんよ」


ぺろり、と耳を舐められる。


「っ、そう、ね。まさかこんなに早く私を捕まえに来ようとは、思ってなかったよ」


「…僕もこんなに早くに名前と会えるとは思いませんでした」


テツヤが剣を持っているということは…
それよりもまずい。
テツヤがこんなに早くに来るなんて思ってもいなかった。
私がテツヤに勝つことは、まずない。
テツヤは、私の剣の師匠だ。
それにプラスして、特有の影の薄さと能力。
勝てるはずがない。


「捕まえにきましたよ、名前」


絶体絶命のピンチだ。



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