13
軍本部の最上階の一室、元帥の部屋。
その部屋には、3人の青年がいた。
「…青峰くんたち帰ってきたそうですよ。何でも名前に会って戦って、青峰くんに傷をつけて逃げたそうですよ」
「ふーん…」
「え、峰ちん、名前ちんに傷つけられたの?ずっるーい」
その部屋で一際豪華な椅子に座っている赤司にその傍で立って報告をする黒子。
それに、ソファーに座っていてお菓子を食べている紫原。
「…大輝には、きついお仕置きでも必要かな」
「そうですね。それと名前、緑間くんの剣でも能力が使えたそうですよ」
その言葉に赤司は、笑った。
「そうなんだ。尚更、捕まえたくなったな」
「赤ちん、自分のものが逃げるなんて許せないよねー」
「当たり前だよ、敦。せっかく手に入れたかわいい僕の兎なんだからね」
ふふと笑う赤司に黒子は、ため息をついた。
「赤司くんのものじゃありません」
「そう怒るな、テツヤ。僕が拾ってきたものを僕のものと言って何が悪いんだい?」
「攫ってきたの間違いでしょう」
「あはは、その通りだね」
赤司は、立ち上がり窓から見える城下に視線をやった。
「…さて、逃げた僕のお姫様はどこにいるのやら」
「そういえばさー、黄瀬ちん、また女遊び始めたらしーよ」
紫原がお菓子を食べながらぼそりと言った。
「またですか。黄瀬くんは、関係を持った女性を必ず殺しますからね。面倒ごとを増やして欲しくないので困りますね」
「…女遊びをねー。ふーん」
「まあ、名前が逃げてしまって欲をぶつける相手がいないんでしょね。それか…」
黒子が言いかけたとき、この部屋にノックもなしに入ってくる青年がいた。
「黒子っちひどいっス。俺はただ、名前っちを抱けないから他の女で代用しただけっスよ!」
入ってきたのは、金髪の顔の整った黄瀬涼太だった。
「えーでも、黄瀬ちん、名前ちんがいたとき女連れ込んできて、そこらへんでヤってなかったじゃん」
「それは、名前っちに俺が遊んでるって気づかれないためっス!街に出てシてたんスよ」
「黄瀬くんにもモラルと言うものがあったんですね。驚きです」
「黒子っちひどい!当たり前っスよ。だって、俺の初めての本気の相手っスもん」
さわやかに言う黄瀬。
それに3人は、ため息をついた。
「それで、涼太。ここに来た目的は?」
「あ、そうっス!俺、赤司っちに頼みたいことがあって!」
「なんだい?」
「青峰っちたちばかりずるいんで、次は俺と黒子っちのペアが行くっス」
黄瀬の言葉に驚く黒子。
ぼりぼりとお菓子を食べている紫原に顔の表情を崩さない赤司。
「……赤司っち?」
返事をしない赤司を変に思い声をかける。
「――いいよ。次は君たちだ。逃げてる名前を捕まえて来い」
「やったー!」
嬉しそうに喜ぶ黄瀬に、無表情の顔を少しほころばせる黒子。
「……名前」
呟かれた名前は、空気に溶け込んだ。
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