12


それは、3年前の名前が軍に来てから2日たったときのことだった。


「――遠征、お疲れ様」


「おう」


赤司に頼まれ、10日ほどの遠征に行って来てその報告をした。


「あ、そういえば大輝」


「なんだよ」


「あのね、一人仲間が増えたんだ。かわいがってあげて」


「…ふーん」


そのまま、赤司の部屋を出る。
部下に聞くと、何でも新しく入ってきた奴は、赤司が気に入って連れてきたらしく、すでに俺以外の幹部に気に入られているらしい。
赤司が連れてきたってことは、強いんだよなそいつ。


「(……どんなやつだよ。がたいがいいのか?まあ、そいつと戦ってみてえな)」


そのとき、前方から白のワンピースを着ていて靴を履いていない少女が走ってきた。


ごつんっ


案の定、ぶつかったわけで。


「…わりぃ、おい、大丈夫かよ」


ってか、何でこんなところに女がいるんだよ。
また、黄瀬か?


「っ、大丈夫、です」


少女の顔は、あどけなく、まだ幼さが残っている顔だった。
綺麗と言うよりは、かわいいの部類に入るな。
胸も、小せーし。


「それにしても、なんでここにお前みたいなやつがいるんだよ。しかも、裸足だし」


「…に、逃げ出したくて」


「は?」


「…急にこんなところに連れてこられて、私、元いた家に帰りたくて」


その言葉に、ピンときた。
まさか、赤司が連れてきたやつはこいつなんじゃ。


「あ、名前っち、見つけたっスよ!」


「!!!!」


黄瀬が走ってきた。
黄瀬に名前と呼ばれた少女は、顔を青ざめて俺の後ろに隠れた。
恐怖で震える姿とか、ちょこんと俺の服の袖を掴んでいる姿を見て、心臓が高鳴ったのは気のせいではないだろう。


「青峰っちじゃないっスか!遠征から帰ってきたんスね」


「ああ。それよりも、こいつ誰だよ」


「あ、名前っちっスか?かわいいっスよね!」


「そんなこと聞いてねーよ」


「あはは。なんか、2日前に赤司っちが気に入って連れてきた子っス」


やっぱり。
俺の思ったとおりか。


「なんで、こいつが…。見るからに弱そうだけど?」


「そうなんスよね!でも、赤司っちが陛下直属の命令で捕まえて来いって言われたらしいっスよ?」


なんとなく想像できた。
どうせ、陛下の命令を無視して無理やりここに置いたんだな。


「なるほどなー。ってなわけで、おい」


「んなっ!」


ぐいっと俺の後ろから前へと移動させる。
少女の驚いた顔もいいな。


「俺の名前は、青峰大輝だ。まあ、幹部だな」


「…幹部!?」


「そうだよ。それでお前は?」


「…わ、私は不破名前」


全ては、この出会いから始まったのだ。



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