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「さ、逃げられないぜ?――名前」


さあ、どうする。


「撃ってみなさいよ」


「は?」


「殺すなら、殺せ。どうせあそこに戻ったところで私は、死んだも同然よ」


こめかみに当たっている銃が、強く当てられる。


「怒るぜ?名前」


冷たい声だった。
目の前にいる真太郎も冷たい目をしている。


「死姦は、趣味じゃねーよ」


「死体を愛でる趣味などないが、名前なら、まあ」


「だったら、どうするの。連れて行く気?それこそ、簡単じゃないはずよ」


私は、剣を地面に勢いよく突き刺した。


「は、何してん…」


「!!!青峰、離れるのだよ!」


目を見開いて焦る、真太郎。
その言葉に気づき、慌てて離れる大輝。


「大輝こそ、焦ってたんじゃない?私の能力を忘れるなんてね」


「!!!!」


地面が、剣を突き刺したところから割れ始める。
それは、二人をめがけて地割れを起こす。


「…まさか、俺の剣でも出来るとはな」


「私も驚いた。はじめてやるもん」


私の能力は、地面を操ることが出来る。
ただし、特注の剣でなければできない。
その剣は、私の力を地面に伝えやすくなっているのだ。


「…油断してたぜ」


ぽたり、とさっきの傷がまだ癒えていない頬から血が滴り落ちた。
だが、それを拭うこともしない。


「…私は、逃げ続ける。ずっとね。捕まるときは…」


私は、言葉の続きを言わずに口を閉じる。
そして、二人ににこりと笑った。


「じゃーね。征十郎や、みんなによろしく言っといて」


その場から、私は逃げたのだった。


‐‐‐‐‐‐


「ふふふ」


一人、窓から外の景色を眺めている青年がいた。


「絶対、逃がさないよ。名前」


その瞳には、何が写っているのか。
青年は、悪戯な笑みを浮かべるだけだった。



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