08


大輝の乱射する弾をよけてると不意に見た真太郎が笑ったような気がした。


「っ、私を愛してるだ、好きだ、とかっ!そんな簡単に言ってくるような奴は嫌いだ!!」


私のその一言に、大輝が乱射するのを止めた。


「…何、お前。俺らの愛が偽物だとでも言いてーのかよ」


「…あなたたちの行動が可笑しい」


「…おいおい、俺ら普通だぜ?お前を心から愛してるからの行動を可笑しいなんて、なあ。緑間?」


「そうなのだよ。俺らはお前にたくさん愛をあげただろう?」


それだ。
それがいけない。
彼らは、いつの間にか可笑しかった。
私に普通以上の愛を与えてきた。
閉じ込めるなんて、当たり前。
キスも当たり前。
私に傷を付けるのも当たり前だった。


「…私は、逃げる。捕まってなんかやんない」


それが、唯一の抵抗だった。
それが、私に出来ることだった。


「……あっそ。だったら、逃げ切って見せろよ」


ぎりっと唇を噛む。
逃げ切りたいよ。
だが、そんな簡単に出来ることじゃない。
目の前にいるのは、軍の元帥直属の二人だ。


「(どうするどうする、名前。ここで捕まったら前の生活に逆戻りだ)」


だったら…
私は、覚悟を決めて足を踏み出した。
前の二人に向かって走り出す。


「……!?」


驚いてる二人。
私は、真太郎の腰にある普段は使わないであろう剣をとる。


「なっ、に!?」


「…一気に形勢逆転ね」


ピッと二人に向けて剣をかざした。


「おいおい、緑間ぁ。お前、名前が近づいてきてると思って嬉しくて油断しただろう」


「!…そんなことはないのだよ」


「説得力ないぜ?」


真太郎が、愛銃を取り出した。
これで、幹部が二人、戦闘に参加だ。


「まあ、お前も武器を持ったことだし…ここからだぜ、名前」


「望むところよ」


その瞬間、大輝が撃ってきた。
それを避け、私は二人へと距離を縮める。


「…青峰ばかりに気を取られるのではないのだよ。嫉妬するだろう?」


後ろから声がした。
私は、慌てて振り返る。
すぐそこまで真太郎が迫っていた。


「っ…!!」


真太郎へと斬りつけると、見切って後ろへと避ける。
そして、私は大輝に斬りつけた。


スッ…


「ちっ、」


大輝が舌打ちをした。
その大輝の頬には、1本の赤い線が。


「よく避けたね」


「ああ?傷をつけといてよく言うぜ」


右手の親指で血を拭い、舐める大輝。
その姿が妖艶に見えた。


「青峰、何をしているのだよ」


「緑間、名前だって幹部だったんだぜ?強いに決まってんだろ?」


にやり、と大輝が笑う。
…やばい、スイッチが入ったか?


「久しぶりだぜ、俺が血を流すのは。やっぱり、いいな名前」


恍惚な笑みを浮かべた、大輝に寒気がした。



[*prev] [next#]