とうとう、『櫻籠りまつり』が始まる。
さっきの人たちが壇上の上に上がると同時に私たち村人は正座をして、頭を下げる。
「かの、松奏院家の人々よ。今年も我らに御加護を」
赤の人が桜に向かって言葉を紡ぐ。
そして、壇上に上がっている人が一人ずつ言葉を紡ぐ。
言葉を紡ぐごとに桜が光る。
その光は優しかった。
「…ねえねえ、これいつまで続くの?」
隣にいるさつきちゃんにこそりと話しかける。
「9時くらいまで続くよ」
「え、長い!そんなに正座してられないよ!」
「がんばってよ、名前ちゃん!」
そうして再び前を向く。
私たちのいるところから彼らは遠い。
だけど、何故か彼らの表情が手にとって分かる。
「ああ、姫様。永久なる姫よ。その群青に何をつめたのだ」
緑色の髪の人が言葉を紡いだ。
真剣に聞かなきゃと思いつつも正座に限界がきている。
いたいいたい。
これ、絶対終わったとき立てないって。
ふと、気を紛らわすために前を見た。
すると、赤の髪の彼と目があったような気がした。
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「…赤司くん?」
ふと隣にいる彼の様子が変なことに気づき声をかけた。
だが、ずっと1点を見つめたまま眼を見開いていた。
「…どうしたんですか?」
彼が見ているほうへ眼を向けると、さっき見た黒髪の少女が見えた。
遠くて顔まではっきりと見えない。
だけど、彼には見えているのだ。
そのオッドアイの眼には。
「……っ、姫様」
そう呟いた瞬間、彼は立ち上がり、壇上を勝手に降りて歩き出した。
「赤司くん!?」
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赤髪の彼が壇上を降りて歩いてくる。
儀式の途中の出来事なのでみんな慌てている。
彼が通る道の人々は、綺麗に左右に分かれる。
「さつきちゃん、どうしちゃったの!?」
「え、知らないよ。っていうか、こっちの方に来てない?」
赤司様。
さつきちゃんは、ひどく慌てた声で言った。
すると、目の前が翳った。
「…姫様」
「え?」
顔を上げると目の前には赤司様?がいた。
「…っ、姫様っ!!」
彼は、泣きそうな顔をして私を抱きしめた。
腰にさしてある刀が当たっていたい。
それよりも足が痛い。
「…待ってた!ずっとこの日を待ってたよ。姫様っ!!」
悲痛な叫び声を私は他人事のよう聞いていた。