「太陽みたいだね」―捌


名前っちの返り血が俺の着物にも飛ぶ。


『うぐうっ!!!』


『ごめんね、記憶、もらうね』


『や、めてっ!』


名前っちの拒否の声なんて聞こえない。
ああ、名前っちの記憶が俺に染み込んでくる。
大好き、大好き。
愛してる。


『また逢う日まで、』


『涼太っ!!』


『…ねえ、名前っち…幸せだった?』


俺は、刀を抜き名前っちに背を向け歩き出した。
これでもう君は、松奏院家に縛られないよ。


『さよなら』


俺の全て。






――残酷な、思い出。
それでいて、忘れもしない思い出。


「……大切な、思い出なんスよ」


「涼太…」


赤司っちたちはずっと俺をにらんでいる。
しょうがないじゃんか。
この方法しかなかったんだから。


「…俺はただ名前っちの願いを叶えたかっただけなんスよ」


「…、私の、願い?」


「そうっス。俺に話してくれた君の願い」


俺と名前っちを結ぶもの。
ただ、叶えたかった。


「ただ、ただ。俺をあんな世界から救ってくれた名前っちの願いを叶えたかっただけなんだ」


君への恩返しをしたかった。


――いつから間違えてたなんてそんなの考えても無駄だと想う。
だってもう、きっと出会ったときから間違えてた。


「…だから」


「…え?」


いつの間にか辰也くんの隣にいた涼太が私の目の前にいた。


「名前っち、俺のものになって…?」


まるであの時のような台詞。


「…ふざけんなっ!!!!」


「花宮っち…」


花宮と呼ばれた青年が声をあげた。
青年の手にしている刀がぎゅっと強く握られる。


「…ねえ、黄瀬。俺、最初に逢ったときからお前のことが嫌いだったよ」


ぼそりと口にした青年の瞳には嫌悪の表情が写っていた。


「黄瀬、お前はまた、裏切ったんだね」
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