あれから数ヶ月。
俺はものすごいがんばった。
松奏院家の事を調べたり、能力のことを調べたり。
名前っちの願いを叶えるために全てを注ぎ込んだ。
裏の仕事をしたり…
いろいろした。
『(名前っち元気かな…)』
俺は、ふと思いつき松奏院の屋敷へと足を運ばせた。
『あ、名前っちだ』
俺は、塀の隙間から覗いてみることにした。
『―っ!あー、大輝ー!!また私の金平糖食べたでしょー』
『げ、ばれっちまったか』
『ばればれだー!!返せー!!せっかく楽しみにしてたのにー!!』
『ぐえええ、首を絞めるな馬鹿!おい、テツ助けてくれ!』
『自業自得です。もう、そのまま息の根を止めたらどうですか?』
『嫌だわ!!!』
目の前に広がる光景に俺は、絶望した。
何であんなに楽しそうなの?
何で俺だけこんなにがんばってるの?
何で…
あんな名前っちの笑顔見たことないよ。
俺は、この気持ちをどうすればいいか分かんなかった。
ただ残るのは、無力感に絶望感、裏切られた気持ちと怒り。
嫉み、そして愛しさ。
『…あははははは』
俺が馬鹿だった。
なんて、馬鹿らしい。
だけど、こんな俺を救ってくれたのは紛れもなく名前っちで。
『……でも、叶えてあげるっスよ。名前っちの願い』
ようやく分かったんスからね。
名前っちの解放の仕方。
『名前っちが死ねばいいんスよ。そうすれば、願いも叶うし俺のものにもなる』
なんて素晴らしいことだろう。
あの名前っちが俺のものになるなんて。
『ああ、名前っちなんて嫌いっス。世界で一番嫌い。俺のものにならない名前っちなんて』
そんなもの殺して正解なんだ。
『早く迎えに行くっスからね。待ってて名前っち』
さて、名前っちを迎えに行く準備でもしましょうか。
−−−−−−
『…?』
『おい、どうしたんだよ名前。んな、塀ばっか見て』
『いや、なんか誰かに見られていたような気がして』
『はあ?気のせいなんじゃねーの。ほら、さっさと紫原のところ行くぞ。あいつなら金平糖持ってそうだしな』
『そうだねー』