全ては、君のためだった。
だって、こんな世界から救ってくれたのは君だから。
『…ねえ、名前っち』
『ん?』
『俺、名前っちのこと大好きっス!』
『ありがと、涼太』
名前っちは、俺が大好きと言うと嬉しそうにはにかむ。
俺はその顔が大好きで何度も言うのだ。
『名前っちー!』
『うふふ、涼太ってほんと甘えたさんだよね』
『そうっスよー、知らなかったんスか?』
『知ってたよ』
名前っちは、にこりと笑って俺の頭を撫でた。
そういえば、名前っちが言うにはあと5日で脱出を決行するらしい。
『…涼太、私の力を少しあげるから』
『はいっス』
俺と名前っちは額をあわせた。
ああ、なんか温かいものが染み込んでくる。
『大事にしてね。涼太にあげる力は、雷だよ』
『雷っスか』
『うん。はい、終了ー』
名前っちの額が離れる。
少し名残惜しい。
『当日には、刀を持ってくるから、大事にしてあげてね』
『了解っス!』
ああ、早く当日にならないだろうか。
そしたら俺は自由で、名前っちの願いを叶えてあげられる。
だって俺は、名前っちのために生まれてきたのだから。
――その日の夜のことだった。
『…あれ?花宮っち、その白の珠、綺麗っスね。どうしたんスか?』
『これ?もらったんだよ』
花宮っちが愛おしそうに見つめる珠。
誰にもらったんだろう。
『…誰にっスか?』
『は、なんでお前に教えなきゃなんねーんだよ』
『いいじゃないっスかあ!』
『別に誰でもいいだろ』
『花宮っちのケチー!!』
『うるせーよ。さっさと寝ろ』
花宮っちは、その珠を大事そうに抱きしめながら横になった。
ほんと誰にもらったんだろうか。
気になるなあ。
俺は、そう思いながらも睡魔には勝てず寝たのであった。