「太陽みたいだね」

あの日、俺の元に神が舞い降りたのかと思った。
全てを失くした俺に。
いや、元々なかったのかもしれないが。
何もない俺に全てを与えてくれたのが君だった。
このモノクロの世界に色を与えてくれたのは君だった。


だから、君のためなら何でもするよ。
俺の全てを君に捧げる。
だから、どうかお願い。
君からの愛を頂戴――


−−−−−−


それは、俺が十になったときだ。
母に連れられてこの帝光村で一番大きなお屋敷に連れられてきた。
そのお屋敷は松奏院家。
摩訶不思議な力を持つ家だ。
そこで、俺は母と別れ女中であろう人に連れられる。
俺の目の前に広がっていたのは、暗い暗い地下牢のようなところだった。


『…ここで、暮らすんスか?』


『そうです。三食は付くので心配しないで下さい』


女中は、さっさと地上へと戻っていった。
そこで俺は理解した。
ああ、俺は売られたのか―と。


辺りを見回してみると目の前にも同じ牢がある。
俺の牢は入り口のすぐだけど、よく見ると奥までずっと繋がっている。
あ、あの桃色の髪は桃井家の人じゃないか?
確か、一人いなくなったと聞いてたがこんなところに居たのか。


『…聞いて呆れる。あの松奏院家がこんなことしてるとは』


自嘲の笑いが出た。
すると、奥の方から叫び声が聞こえた。


『うわあああああああああぁぁああああ』


何事だ!?
しばらくたってから、数人の男性の声がした。


『…はあ、今回もだめだったか』


『仕方ないな、こればっかしは。…おい、死体はどうするんだ?』


『ああ、それなら担架で運んで木吉家に持っていくぞ』


『了解』


目の前で、おびただしいほどの血塗られた少女が担架に運ばれてきた。
そして、そのまま目の前を過ぎて地上へと出て行った。
ああ、木吉家はこの帝光村で死の役割をしている、この村で2番目に大きな家だ。
なんでも木吉家には代々死人を喰らう刀があるらしい。
だからこの村の人々は、家で死人が出たら木吉家へと持っていくのが決まりだ。
それと、あとから分かったことだが、松奏院家は子供を使って人体実験をしているらしい。
失敗したら死が待っている。
そんな恐怖と隣り合わせでこれから過ごすのかと思うと逃げ出したくなった。


『…ねえ、お前あんまり希望は持たないほうがいいよ』


俺の目の前の牢に入っている少年が口を開いた。
俺と同い年だろうか。


『ここは、希望も何もない。ただ待っているのは死だけ。そして逃げることなんて出来ないよ』


『…そうっスか』


その少年の名前は、花宮真と言うらしい。


『…絶望だらけっスね』


俺も目の前にいる花宮っちのように光を灯さない瞳になるのだろうか。

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