黄色の鳥は彼方へと飛んだ

君が、笑ってくれたから。
君が、俺に話しかけてくれたから。
絶望で染まった俺の世界を希望で満たせてくれたのは君だった。


君だけが俺の全てだった。
何もない俺に手を差し伸べてくれたのは君だけだった。
だから、守りたかった。
叶えたかった。
愛したかった。


−−−−−−−


目の前で起きた現実を認めることは出来なかった。


「……っ、黄瀬、てめえっ!!」


そこには、背中を切られた大輝の姿があった。


「…なにを、しているのだよ!黄瀬!!!」


「大丈夫ですか!?青峰くん!!」


「…峰ちん!!」


「…説明、してくれるよな?―涼太」


征十郎がいつにも増して焦っている。


「…一発で殺せるかと思ったんスけど、さすが青峰っち。寸前で避けたっスね」


感情のない笑みで言う涼太。
嫌だ。
止めて、嘘でしょ?
これは、夢でしょ?


「――現実っスよ、名前っち」


涼太の口が無残にも現実だと教えてくれた。


「…久しぶりっスね、花宮っち」


「…逢いたくはなかったけどな」


なんで、敵の人と仲いいの?
ねえ、なんで?


「っ、涼太」


「赤司っち…すんませんっス、騙してて」


騙してて?


「名前っちを探すためには松奏院家に入っていたほうが楽だったんスよ」


「…僕たちを利用したわけか」


「そうっスよ」


涼太は、私たちに背を向け辰也くん達のほうへと歩み始めた。


「涼太っ…」


「名前っち…ごめん」


涼太は一瞬振り返って、私に謝った。
何に対して?
裏切ったこと?
騙してたこと?
それとも両方?


「おかえり、涼太」


「ただいまっス、氷室っち」


…!!!
まさか、あの庭で逢ったときは初対面じゃなかったの!?
私は、芝居につき合わせられたの!?


ズキンッ


ああ、頭が痛い。
そうだ、あの刀が…涼太の『雷雅羅鬼一』が血に濡れているのを私は、見たことある。
そして、花宮と言う青年の白色の珠も見たことある。


全てが線で結ばれたときに、思い出される。


「ねえ、名前っち記憶、戻したい?」


悪魔の声が聞こえた。

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