その日の桜は、今までで一番綺麗に見えたことを今でも覚えている。
「なーなー、今日、お祭りじゃん?みんなでお花見しようぜ!」
その日の放課後、高尾くんの一言から始まった。
「…お祭り?」
「あー、お前は知らないんだっけ。今日は、1000年以上続く『櫻籠りまつり』なんだよ」
「1000年以上も!?」
「ああ、この村を治めている松奏院家の初代の人の命日を悼んで始まったんだよ」
「へー」
「そしてね、この帝光村で一番盛り上がるお祭りなんだよ!今日がその命日の日。この村で一番大きな桜の木のところがメイン会場なの!」
火神くんのあとにさつきちゃんが説明してくれた。
今の時期は桜が満開だから、お花見に丁度いいと思うし。
だから、高尾くんが誘ってくれたのね。
「しかも、そのお祭りは今日から一週間続きます」
「長いねー!」
桜井くんが言うには、1日目がここの村人がメイン会場に全員集まって命日を悼むらしい。
2日目〜4日目まで屋台が出たり、桜の木を囲んで踊ったりするらしい。
5日目は、木刀などを使っての試合があり、6日目は、川に灯篭を流してからの花火大会。
そして最終日、7日目はまた1日目のように村人全員がメイン会場に集まり儀式をするらしい。
「大掛かりなんだねー」
「まーね!でもその分盛り上がるしな!」
なー火神ー!高尾くんはそう言いながら火神くんの肩を抱く。
「だから、今日は学校が午前帰りなんだね」
「そうゆうこと!じゃあ、みんな一旦帰って、2時に帝光神社前集合なー!」
みんな、はーい!と声を出し、家へと帰った。
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「じゃあ、おばあちゃんとおじいちゃん。私、行くね!」
「名前ちゃん、気をつけてな」
「うん、ありがとおばあちゃん」
「わしらも夕方にはそっちに行くからな」
「うん、じゃあいってきまーす」
私は、携帯と財布をショルダーバックに入れ、スニーカーを履き目的地へと歩き出す。
それにしても、私を引き取ってくれたおばあちゃんとおじいちゃんは優しくていい人だ。
この家に来てよかったと思う。
私は、携帯で時間を見る。
「あ、まだ1時半だ。張り切りすぎちゃった」
私の家から神社は近くて1分程度でいける。
「…やっぱり、誰も来てないかー」
みんなの姿はない。
立っているのもアレなんで、私は神社へと登る階段に腰を下ろした。
「―――君、こんなところでどうしたの?」
ふと後ろから声が聞こえ、振り返るとそこには一人の青年が立っていた。
「…っ!!!」
「?」
眼があった瞬間、青年の眼が大きく見開かれ、私はいつの間にか青年の腕の中にいた。