呟いた名前はどこに行くのだろう

「んっ……」


ふと、目が覚めた。
……なんか胸騒ぎがする。


「…テツヤ、征十郎、大輝、敦、真太郎、涼太」


ああ、みんなに会いたいよ。
私は、ようやくはっきりしてきた頭を完全に起こすため屋敷内を歩こうと障子戸を開いた。


−−−−−−−−


「…そろそろやってくる頃だと思ったよ」


氷室家の屋敷の広大な庭。
そこに、氷室たちは赤司たちを待ち伏せていた。


「…姫様を返してもらいに来ました」


「返す?名前は君達のものじゃないだろう?俺のものだよ」


「…ふっざけんじゃねえ!!」


青峰が怒りに狂ったようにすぐさま刀を抜く。


「…大輝、止めろ」


「っ!だって、赤司!」


「いいから、止めろ。僕の言うことが聞けないのか」


「っ…」


赤司の言葉に青峰は刀を鞘に戻す。


「で、どこに名前はいるのですか」


「テツヤくん、怪我治ったみたいだね」


「名前はどこですか」


「…いつもいつもいつもいつも」


氷室の雰囲気が変わった。
ぶつぶつ何かを呟いている。


「いつもいつも、名前名前ってうるさいんだよ」


「!!」


「何度言ったら君達は分かるのさ。名前は俺のだよ。身体も心も髪の毛も血も声も…名前の全て!!!!」


どすんとここら一帯の空気が重くなった。


「特にテツヤくんは昔から俺をイラつかせるのが上手いよね」


「…名前はどこですか」


「ほんとに昔から…名前名前って…名前に一番近いのは、テツヤくんじゃないよ」


「…え?」


「俺だよ」


黒子たちはわけが判らないような顔をした。


「…俺は、名前の血の繋がった兄、だよ」


氷室の言葉に黒子たちが固まるのが分かった。
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