幸せになる運命なんだよ

『ねえ、敦。君は幸せ?』


『…?俺、幸せってのわかんないしー』


俺がそう言ったら、名前ちんは悲しそうに笑った。


『そうかー…、今度聞いたときは、敦が幸せって言ってくれると嬉しいな』


『…?』


そのあと名前ちんは黒ちんのところに行ったんだけど、それから俺の頭の中には名前ちんの言葉しか思い浮かばなかったよ。


−−−−−−−−


「紫原っち?」


「あれ、黄瀬ちん。こんな時間にどうしたの?トイレ?」


「それは、俺のセリフっスよ!紫原っちこそこんな時間にトイレっスか?」


満月がよく見える深夜1時ごろ。
縁側に座ってぼーっと満月を見てると黄瀬ちんに話しかけられた。


「は?ちげーし。ただ満月見てただけだし」


「俺もトイレじゃないっスよ。喉が渇いたから水を飲みに行こうと思っただけっスよ」


すると黄瀬ちんが俺の隣に座ってきた。


「……やっぱり、名前っちが傍にいないとだめっスね」


「…まー否定はしないよー。名前ちんがいないと心に隙間が出来るしね」


ほんと、俺らって名前ちん無しじゃ生きていけない。


「こんなに名前っちの存在がこんなに大きいとは思ってなかたっス。…いつの間に大きくなったんスかね」


「さあ?俺と黄瀬ちんじゃあ違うでしょ。黄瀬ちんは今回からだしね」


「そう、っスね…」


「でも、俺らびっくりしたんだよ?俺と黒ちんみたいな世襲か名前ちんからしか力を与えてもらえないのに力を持ってたんだからね」


「……俺、名前っちに逢ったこともないっスから。運命なんスかね」


「……うっざー」


「ひどいっス!!紫原っち!!」


俺は、もう寝るために立つ。


「あれ?寝るんスか?」


「うん。今日、赤ちんに仕事頼まれたし」


「そうっスかー俺はもう少しここにいるっス」


「んー。じゃあ、おやすみ黄瀬ちん」


「おやすみなさいっス!」


俺の部屋へと戻り、布団に入って目をつぶった。


名前ちん。
今ならちゃんと分かるよ。
幸せが。


−−−−−−


「……運命っスか」


自分で言っておきながら、笑いが出る。
そうだ、俺と名前っちは運命で結ばれているのだ。


「…届かないっスね、やっぱり」


手を伸ばしても届かないや。
満月には。
どうしても。
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