嫌われ者だった俺を救ってくれたのは君だった。
卑しい者として扱われていた俺を救ってくれたのは君だった。
そんな君をいつからだったか愛し始めた。
君の笑顔が、君の話が、君の存在全てが俺にとっての幸せだった。
−−−−−−−−
「……ふふ」
「どうしたんや、辰也様」
月がもう既に真上を通り越した頃だった。
氷室の屋敷のある一室で氷室を含めた6人が集まっていた。
その中に、氷室に膝枕をしてもらいながら寝ている名前の姿があった。
「いや、愉しくてさ」
細く骨ばった男らしい手が優しい手つきで寝ている名前の髪をすく。
「はて?この展開は楽しいん?」
「楽しいよ。だって名前が俺の手元にいるし…」
すると、障子に背中を預けている青年があくびをした。
「…なんや、若松。眠いんか?」
「当たり前っすよ。こんな時間に起こしといて…」
「まーまー、そう言うなよ若松!姫さんに逢えたんだしな!」
木吉が笑いながら若松の肩を叩く。
「こんな時間に笑える力があるお前がすげーよ」
「…それで?」
そこにある一人の青年の声が聞こえた。
声のした方を見ると片膝を立て、青紫の刀を抱えるようにして持っている青年がいた。
その青紫の刀には、白色の珠がついている。
「それで、松奏院のやつらは必ずここに来るだろ?その対策は、してんのか?」
「……なんや、花宮が正しいこと言うた」
「おい!俺をなんだと思ってんだ!」
その花宮と呼ばれた青年は、ため息をついた。
「…んっ」
「はあ、お前たち静かにね?名前が起きてしまうだろ?」
「すまんの、辰也様」
「…悪い」
素直に謝る二人に笑みを浮かべる氷室。
「いいさ。仲がいいのは一向に構わないよ。それで、これからだっけ」
「ああ」
「そうだね、確実にこの屋敷に来るだろうね」
「ならっ…!!」
「だけど、数日は来ないよ。だってテツヤくんの傷がまだ癒えてないからね」
未だに氷室の名前の髪をすく手は止められていない。
「そうだぜ、俺が直接やってやったんだからな」
「木吉とか、かわいそうだなおい」
「若松ー、お前も俺の『園川血盟』の餌にしてやろうか?」
氷室があからさまにため息をつくと会話が止まった。
「でも、君達は負けないだろう?……特に花宮はね」
「…はっ、うざ」
そして、氷室はにこやかに笑って言った。
「よろしくね、俺のかわいいかわいい従者達」