迎え来る闇のようだった

ずっとだ。

ずっとだった。
ずっと一人だった。
こんな俺に手を差し伸べてくれたのは君だけだった。

だから、だから


−−−−−−−−


「…あれ?テツヤ?姫様?」


屋敷に赤司と黄瀬、紫原に緑間、そして青峰が帰ってきた。
寝ている名前の護衛として守りの力を持つ黒子を留守番役として置いていったのだが、屋敷に人の気配を感じない。
名前の気配がない。
5人は、急いで名前の部屋へと向かうことになった。


「赤司っち!あの庭で倒れているの黒子っちじゃないっスか!?」


「テツ!?」


黄瀬の言葉に青峰が庭先で倒れている黒子に駆け寄った。
それに続きみんなも駆け寄る。
そこには、血だらけで倒れている黒子の姿があった。


「おい、テツヤしっかりしろ。僕たちの留守中に何が起きた。それに姫様は?」


「っ…あ、かしくん…たつ、や様が来て……すみ、ませ、ん。名前を連れて、いかれ、まし、た……」


苦しそうに言う黒子。
止血をし始めた黄瀬と緑間が「もうしゃべるな」と言う。


「…辰也、様?」


「赤ちん?」


赤司の様子が変になったことに気づいた紫原が声をかけた。
その瞬間。


ボワアア……


近くの大きな木が燃え出した。


「えええ、赤司っち!?何してんスか!」


「赤司!?何やってんだよ!早く消せ!!」


「しかもあの木は、名前のお気に入りの木の一つなのだよ!!」


「赤ちん…」


みんなの焦ったような声に気づいた赤司は、ああと呟く。


「…ごめん、ちょっとイラついてて……」


赤司は、刀を抜き差し木に向かい刀を一振りした。
その刹那、木が闇に消えた。


「…姫様」


「ほんと、無敵の能力っスね…」


名前っちの次に。
そんな黄瀬の言葉は独り言のように消えた。


「…僕をこんなに怒らせたんだ、辰也様にはそれ相応の罰を与えなきゃだね」


絶対零度の表情にみんなの顔が引きつく。


「おい、お前ら出立の準備をしろ。テツヤの傷が癒えたらすぐに辰也様の元に向かうぞ」


「…まあ、俺たちのものを勝手に取られたのだからな、それを取り返しに行くのは当たり前なのだよ」


「そうだぜ…」


きらりと赤司の刀『焔叢雲』の切っ先が光ったような気がした。
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