過去に導かれし姫よ―参


そう言って笑う辰也くんが怖かった。


『……辰也くんはその言葉の呪いで人を殺しちゃったことがあるの?』


『……そうだよ』


私の問いに辰也くんは目を閉じて言った。


『じゃあ、私と同じだね』


『え、名前も殺しちゃったの!?』


『…うん。私、ただ死にたくないって思っただけなの。そしたらさ、目の前にはおびただしい量の血と死体がたくさんあったの』


私が言葉を出していると急に暖かい温もりに包まれた。


ぎゅう…


『…ごめんね』


『?』


『ごめんね、名前』


私を抱きしめて謝る辰也くん。
私には彼に謝られる理由なんてないのに。


『ごめんね』


だけど、彼に謝られるのは嫌ではなかった。


『…もう、時間だ名前』


『え?』


辰也くんは、私から離れる。
そして、優しい手つきで頭を撫でた。


『…もう、帰りな』


『でも、私帰り道が分からないよ』


『ああ、そういえばそうだったね』


すると辰也くんは、私の額に辰也くんの額をコツンと当てた。
ここから屋敷までの帰り道が頭の中で示される。


『…また、逢おうね。俺は大抵ここにいるから』


にこりと笑う辰也くんに見送られ私は屋敷へと戻った。


『……まさか逢うとは。あんなに小さかった名前がこんなに大きくなるとはね』


ーーーーーー


あれから帰った私は、こっぴどく怒られ結局お父様達が折れて仲間になったのだ。


それから監視の目を盗んでは、辰也くんに会いに行った。





『…ねえ、名前。俺には君しかいないんだよ、だからだから…』




ああ、なんでそんな哀しい顔をしているのだろうか。


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