それは、鮮やかな始まり

―――2×××年、春。


「名前ちゃーん!!」


「あ、さつきちゃん。おはよー」


後ろから巨乳の桃色の髪のさつきちゃんが走ってきた。


「おはよー!!」


腕に胸が当たってるよ、さつきちゃん。
腕にぎゅうぎゅうと抱きついてくるさつきちゃんに、はあ、とため息をついいた。


「ここは、田舎のほうで空気がおいしいね」


「でしょ!」


ここは、帝光村。
高校は一つしかなくて全校生徒は20人。
小学校も中学校も一つしかない、田舎の村。
しかもこの村は比較的閉鎖的で、この帝光村から出て行くのを嫌がる。
そして、余所者を嫌う傾向にある。
まあ、住んでしまえば仲良くしてくれるからいいけど。
私は、最近この村に来たばかり。
と言っても1週間くらい。
孤児院育ちで養子としてこの村に来ました。


「ほら、行こう!」


「うん」


ぐいぐいと引っ張る彼女に少し微笑み、学校へと歩いていった。


「お、名前と桃井。おはよー!」


「あ、高尾くんおはよー!」


丁度下駄箱で同じ学年の高尾くんに会った。
すると、玄関からあくびをした火神くんが来た。


「火神くんおはよー」


「ん?はよっす」


その後ろから桜井くんも入ってきた。


「あ、桜井くんもおはよー」


「すみません、おはようございます!」


いつも通り謝ってからの挨拶に苦笑いをしてしまった。
というか、学年全員集まっちゃった。


「全員集合だねー」


さつきちゃんの言葉にうなずくみんな。


「じゃあ、仲良く一緒に教室まで行こうぜ!」


高尾くんの言葉にみんな笑いながら返事をした。


***********


「……おい、まだ見つかんねぇのかよ」


ある一軒家の奥の座敷。
少し薄暗く、明かりは部屋の隅においてあるろうそく1本のみ。


「…残念ながらまだですね」


青色の髪の少年に空色の髪の少年が答えた。


「姫様ってどういう人なんスか!?俺まだ会ったことないんスよ!」


「黄瀬は、今回からだからな。まあ、会えば分かるのだよ」


黄瀬と呼ばれた黄色い髪の少年に緑色の髪の少年が答える。


「…赤ちん?どうしたのー?考え事?」


「ん?ああ。ただ、昔のことを思い出してただけだよ」


紫色の髪の少年が赤色の髪の少年に聞いた。
彼らの座っている隣には、一人一つずつ刀が置いてある。



「…赤司くん」


「テツヤ、大丈夫だよ。と言うかお前も大丈夫かい?あまり思いつめるとだめだよ」


「…ですが、今回も会えなかったら」


「そうだぜ、赤司!あの時から会ってないんだぜ!?」


「テツヤも大輝も慌てるな。今、探してるんだから」


そう言って赤の髪の少年は刀を持って立ち上がる。


「…ほら、そろそろ行くぞ。今日は、旦那様と奥様と……姫様の命日なんだからな」


彼らは、続々と立ち上がり部屋から出て行った。
最後に部屋から出たのは空色の少年で。
彼は、ろうそくの火を消す。


「……貴女のことをずっと待ってるんですよ、名前」


ふと、その部屋に飾られている掛け軸を見て呟き、部屋を後にした。

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