―――2×××年、春。
「名前ちゃーん!!」
「あ、さつきちゃん。おはよー」
後ろから巨乳の桃色の髪のさつきちゃんが走ってきた。
「おはよー!!」
腕に胸が当たってるよ、さつきちゃん。
腕にぎゅうぎゅうと抱きついてくるさつきちゃんに、はあ、とため息をついいた。
「ここは、田舎のほうで空気がおいしいね」
「でしょ!」
ここは、帝光村。
高校は一つしかなくて全校生徒は20人。
小学校も中学校も一つしかない、田舎の村。
しかもこの村は比較的閉鎖的で、この帝光村から出て行くのを嫌がる。
そして、余所者を嫌う傾向にある。
まあ、住んでしまえば仲良くしてくれるからいいけど。
私は、最近この村に来たばかり。
と言っても1週間くらい。
孤児院育ちで養子としてこの村に来ました。
「ほら、行こう!」
「うん」
ぐいぐいと引っ張る彼女に少し微笑み、学校へと歩いていった。
「お、名前と桃井。おはよー!」
「あ、高尾くんおはよー!」
丁度下駄箱で同じ学年の高尾くんに会った。
すると、玄関からあくびをした火神くんが来た。
「火神くんおはよー」
「ん?はよっす」
その後ろから桜井くんも入ってきた。
「あ、桜井くんもおはよー」
「すみません、おはようございます!」
いつも通り謝ってからの挨拶に苦笑いをしてしまった。
というか、学年全員集まっちゃった。
「全員集合だねー」
さつきちゃんの言葉にうなずくみんな。
「じゃあ、仲良く一緒に教室まで行こうぜ!」
高尾くんの言葉にみんな笑いながら返事をした。
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「……おい、まだ見つかんねぇのかよ」
ある一軒家の奥の座敷。
少し薄暗く、明かりは部屋の隅においてあるろうそく1本のみ。
「…残念ながらまだですね」
青色の髪の少年に空色の髪の少年が答えた。
「姫様ってどういう人なんスか!?俺まだ会ったことないんスよ!」
「黄瀬は、今回からだからな。まあ、会えば分かるのだよ」
黄瀬と呼ばれた黄色い髪の少年に緑色の髪の少年が答える。
「…赤ちん?どうしたのー?考え事?」
「ん?ああ。ただ、昔のことを思い出してただけだよ」
紫色の髪の少年が赤色の髪の少年に聞いた。
彼らの座っている隣には、一人一つずつ刀が置いてある。
「…赤司くん」
「テツヤ、大丈夫だよ。と言うかお前も大丈夫かい?あまり思いつめるとだめだよ」
「…ですが、今回も会えなかったら」
「そうだぜ、赤司!あの時から会ってないんだぜ!?」
「テツヤも大輝も慌てるな。今、探してるんだから」
そう言って赤の髪の少年は刀を持って立ち上がる。
「…ほら、そろそろ行くぞ。今日は、旦那様と奥様と……姫様の命日なんだからな」
彼らは、続々と立ち上がり部屋から出て行った。
最後に部屋から出たのは空色の少年で。
彼は、ろうそくの火を消す。
「……貴女のことをずっと待ってるんですよ、名前」
ふと、その部屋に飾られている掛け軸を見て呟き、部屋を後にした。