どうしても嫌いだった。
君の何もかも知っているような瞳が。
心の奥底まで見透かすような瞳が。
そして、何もかも諦めたような瞳が。
『…初めまして』
『……ぼりぼりぼり』
俺は、目の前にいる赤の少年と黒の少女がいるのにもかかわらずお菓子を食べていた。
少女は、俺の紫原家が昔から仕えている松奏院家のお姫様で少年は、その少女に仕えている者らしい。
『私は、松奏院名前っていうの。こっちは、赤司征十郎。あなたの名前は?』
その名前という少女は、俺と同じ七つにしては大人びていた。
『おれは、紫原敦。最初に言っとくけど俺、あなたのこと嫌いだから』
『っ、お前っ!』
『まーまー、征十郎。落ち着いて』
赤司という少年は、俺に殴らんばかりの勢いでつっかかりそうだった。
それをお姫様が止める。
俺、悪くねーし。
本当のこと言っただけだし。
『私のこと嫌いかー。しょうがないね』
あははと笑いながらお姫様は、頭をかく。
『敦、くんだっけ?君のことは、よく聞いてるよ。優秀なんだってね』
『……お父さんが言ったのか』
俺の家は世襲で仕えているからな。
『まだ、私のこと知らないでしょ?知ってから嫌いになってね』
そう言いながら笑ったお姫様を変な人だと思った。
『考えとくー』
『考えといて』
それじゃあ、自由にしてていいよ。
そう言ってお姫様と赤司という少年は、去っていった。
赤司ってやつ、俺のこと睨んだし。
『なんなの、あれ』
ぽつりと呟くと後ろから知っている声がした。
『あれ、黒ちんじゃん。どうしたのって、ああ。お姫様に仕えてるんだっけ』
『紫原くん。お久しぶりですね。そうですよ、やっとの思いで仕えることができました』
嬉しそうに話す黒ちんが分からない。
なんでそこまでして必死になろうとするの?
黒子家だから?
んー、分かんないし。
やっぱりムカつくな、黒ちん。
『黒ちんの考えてることほんと分かんない。どこが嬉しいのさ』
『紫原くんは、嬉しくないのですか?』
『嬉しいはずないじゃん。誰が好き好んでお姫様に仕えなきゃいけないのさ』
黒ちんは、きょとんと顔をした。
『……たぶんそれは、まだ味わえてないんですよ』
『何に?』
黒ちんは、優しく微笑みながら言った。
『それは、自分で見つけてください』
俺は、これからその言葉の通り見つけることになる。