桜の香りを追いかけて

違和感を感じたのは、目が覚めてすぐのことだった。


「……あれ?名前?」


昨日は、夜遅くまで名前のことについて話したり、帰ってきた青峰くんと緑間くんの戦った青年の話を聞いたりしていた。
寝不足ですかね。
だから、考えたくもなかった。
やっと帰ってきた、やっと戻ってきた温もりを感じられないのだ。


「っ、名前っ!!」


僕は急いで名前の眠っているだろう部屋へ走っていった。


バンッ


礼儀のない開け方でも今だけは許してください。


「っ、まさかっ!!」


布団をあけるとそこには、丸まった座布団が。
やられた。
しかも、もう布団が冷たい。


「…随分前にいなくなりましたね。どうしましょうか…」


まさか、抜け出すなんて。


「…とりあえずみんなを叩き起こして赤司くんに相談ですね」


急ぎ足でみんなの元へと歩きだした。


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「は?テツヤ、もう一回言って?」


赤司くんの睨みは怖いです。


「…名前がこの屋敷から逃げ出しました。僕が部屋に行った時にはもうすでに布団が冷たかったのでかなりの時間が経ってますね」


「っ!え、名前っちを早く見つけなきゃじゃないっスか!」


黄瀬くんは、刀を持って立ち上がった。


「涼太、落ち着け。姫様が行くところなんて限られてるからな。これから手分けして探すぞ」


赤司くんは、黄瀬くんを静かにさせ的確に指示を出していく。
紫原くんは、屋敷で待機。
青峰くんと緑間くんは、学校。
そして、僕と黄瀬くんと赤司くんは、橘家に向かうことになった。


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「ここですね」


帝光神社のすぐ近くにある橘家。
帝光神社の近くとか僕達松奏院家をどんだけ怒らせたいんですかね。


「うわああああああああっ!!!」


橘家の中から男性の叫び声が聞こえた。
僕達は、急いで建物の中に入る。


そこは、あの赤司くんでさえ顔を歪めるほど血の香りで噎せ返っていた。
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