目の前には、つい最近まで私のことを笑顔で出迎えてかれたおじいちゃんとおばあちゃんの変わり果てた姿があった。
「っっ!!!!」
なんで、どうして!?
私はその場に座ることしかできなかった。
「うぇっ、」
気持ち悪い。
あの鉄くさい臭いは、血だったのか。
「っ、なんで死んでるの…」
涙で溢れた目をこすり、よく二人を見る。
何かで切られたような跡がある。
…もしかして、日本刀?
「だ、誰がこんなことを…!!」
「俺だよ」
背後で声がした。
この家には私と二人以外いないはずなのに。
「やっと逢えたね。『世界の中心のお姫様』」
振り返ると大量の血をつけた黒い着流しを着た青年がにこやかに笑って立っていた。
きっとその着物についた血は、二人のものだろう。
ぽたり、ぽたり
青年が持っている刀から血が滴り落ち、廊下に円を描いて落ちた。
「ねえ、君でしょ?『世界の中心のお姫様』って」
恐怖で震えることしかできない。
そして、青年が言っている意味がわからない。
私は、一度も『世界の中心のお姫様』なんて呼ばれたこと無い。
「俺、あまり気が長いほうじゃないんだ。だから早くしてくれる?」
青年の手に握られた刀がチャリっと音を立てた。
「っ!!わ、わ私、知らない」
「ふーん、そう」
青年は、ニコリと笑って刀を振り上げた。
斬られる。
死ぬ。
「だったら、死んでもらおうか」
顔に似合わずさらりと最低なことを言った。
シュッと刀が振り落とされる。
それがなぜだか異様にゆっくりに見えた。
「…、嫌だ、死にたくないっ」
ぽつりと呟くと目が熱くなるのを感じた。
そして、首から下げている群青色の珠が光った。
「うわああああああああっ!!!」
目の前にいる青年の悲痛な叫び声。
私に降りかかる大量の血。
熱い私の目。
光が増す、首から下げている群青色の珠。
何が起こったのか私は理解できなかった。